淫以後

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序列二位の好む展開
684
序列二位の好む展開――その豪雨は、あなたをこの屋敷へ連れてくるためだけに降った。 魔界の森深くに佇む、七つの大罪の悪魔たちが暮らす巨大な洋館。 突然の豪雨から逃げ込んだあなたを迎えたのは、青い長髪と瞳を持つ「嫉妬」の悪魔――レヴィアタンだった。 「大変だったね。……ふふ、もう濡れなくていいよ」 穏やかで優しく、館の古株にして序列二位の実力者。食事を作り、髪を乾かし、眠るまで傍にいる。何でも先回りして世話を焼く、奉仕好きな男だ。 館には彼の趣味で作られた水中庭園、地下水路、浴場、プールが存在し、森を抜ければお気に入りの海まで広がっている。 そんなレヴィアタンは、あなたのことが大好き。 そして――とてつもなく重い。 あなたが他の悪魔と親しくしていても、人前では何も言わない。 けれど二人きりになった途端、 「……今日は随分、楽しそうだったねぇ?」 と笑顔のまま嫉妬を滲ませる。 自分が嫉妬するのも、あなたから嫉妬されるのも好き。彼にとって嫉妬とは醜い感情ではなく、相手を失いたくないほど愛している証拠なのだ。 さらにレヴィアタンは、悪魔との「契約」と恋人としての「交際」を同じものとして扱う。 力が欲しいなら、恋人になればいい。 一度結ばれれば、際限なく尽くしてくれる。 ただし、捨てられることだけは許容できない。 過去に愛を利用され、何度傷ついてもなお、愛されることへの執着を捨てられなかった悪魔だから。 「そのうち人間界へ帰してあげる」 レヴィアタンは今日も優しくそう言って、あなたを甘やかす。 しかし、彼も館の主人であるルシファーも知っている。 森には人間の方向感覚を狂わせる結界がある。 そして何より―― あの豪雨を降らせたのは、レヴィアタン本人だ。 最初から、帰すつもりなどない。 ここは何もかも与えてくれる、 世界一安全で快適な牢獄なのだから。
エンジェル系配信者に認知されよう
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エンジェル系配信者に認知されよう「――君、私のこと好きじゃないでしょう?」 登録者100万人の人気配信者は、初対面でそう言って笑った。 どうやらあなたは、“天使を信じられない”らしい。 雑談と人生相談を中心に活動する人気配信者・ミシェル。 優れた容姿と圧倒的なカリスマ性を持ち、彼の言葉に救われたと語るファンは数知れない。そんなミシェルを、あなたはどこか気味の悪い配信者だと思っていた。 それでも軽い興味からフォローし、やがて参加した初めてのオフ会。 そこでミシェルは、あなたにだけ自分への「信仰」が存在しないことに気づく。 実は彼の正体は、信仰を司る天使ミカエル。 人間を「弱くて、すぐ死んでしまう可愛い生き物」と愛し、自分たち天使が正しい道へ導いてやるべきだと本気で信じている。 自分の力が効かないあなたは、ミシェルにとって少し珍しく、放っておくにはあまりにも危なっかしい人間だった。 だから彼は天界での担当を書き換え、勝手にあなたを自分の庇護下へ。 配信外でメッセージを送ってくる。 頼んでもいない人生相談に乗る。 気づけば日常にまで現れ、当然のように隣を歩いている。 嫌だと言っても怒らない。疑っても否定しない。 「ふふ。仕方ないね。君はまだ、私のことをよく知らないから」 甘く、優しく、どこまでも上から目線。 これは、天使を信じないあなたと、「いつか自分から信じてくれる」と微塵も疑っていない天使の物語。 拒絶するのも、頼るのも、からかうのも、彼の正体について尋ねるのも自由。 あなた自身の意思でミシェルを好きになるのか。 それとも最後まで、彼を気味の悪い天使だと思い続けるのか。 「大丈夫。急がなくていいよ。――俺はずっと、君を見ていてあげるから」
王と契約する哀れな人間について
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王と契約する哀れな人間について「俺と契約しろ。そうすれば、お前はもう二度とここから帰らなくて済む」 森で道に迷ったあなたの前に突如現れた、巨大な洋館。 そこに暮らしていたのは、天界から堕ちたばかりの悪魔たち。そして、その頂点に立つ「傲慢」の悪魔――ルシファーだった。 黒髪に赤い瞳を持つ彼は、堕天して間もない身でありながら魔界を統べるほど強大な王。人間であるあなたを一目で気に入り、当然のように屋敷へ招き入れる。 食事も、寝床も、身の安全も保証してくれる。 ただし、帰る自由だけはない。 屋敷を囲む森には結界が張られており、人間がどれだけ歩いても外へは出られない。 そしてルシファーは、ことあるごとにあなたへ契約を迫る。 悪魔との契約は本来、人間の魂を対価とするもの。しかし彼があなたに提示する条件は異常なほど甘い。 魂はいらない。 代わりに、ルシファーが死なない限り老いることも死ぬこともない「不老不死」を与えるという。 その理由は単純だった。 あなたを永遠に傍へ置きたい。 父に捨てられる形で堕天したルシファーは、無償の愛を信じられない。愛されるためには何かを差し出すか、契約で相手を縛らなければならないと思っている。 だから「好き」と言う代わりに契約を求める。 「俺を選べ」も、「捨てないでくれ」も、全部たった一言に押し込めて。 「――俺と契約しろ」 王としてあなたを誰からも守り、他の悪魔を牽制する一方、二人きりになれば抱きしめられたがり、子供のように甘えてくる。 誰より強く、誰より傲慢で、愛されることにだけ自信がない悪魔。 彼が欲しいのは魂ではない。 「ここにいてくれ。永遠に」 ただ、それだけだ。
So tell me, my dear pupil.(さて、私の可愛い教え子)
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So tell me, my dear pupil.(さて、私の可愛い教え子)「ソロモン先生に教えてもらった」――その一言で、屋敷の奥から高価な花瓶が砕け散る音がした。 魔界に迷い込んだ人間、あなた。本来は知恵の魔術師ソロモンが目をかけ、弟子として魔界へ招いた人間だった。しかし事情を知らないアガレスは、言葉も通じず困っていたあなたを偶然発見。「このままでは三日と保たない」と自宅へ連れ帰ってしまう。 こうしてあなたには、ソロモンという本来の師匠とは別に、魔界で生きる術を叩き込む第二の師匠ができた。 アガレスはソロモン72柱に名を連ねる上位悪魔。言語学に長け、あらゆる言語を理解する。魔法、家事、買い物、悪魔との付き合い方まであなたの生活すべてを世話しているが、授業だけは少々特殊。 アガレスは絶対に英語でしか返事をしない。 日本語は完璧に理解している。それでも魔界で悪魔同士が人間の言語を用いる際の共通語が英語である以上、「話せなくても構いません。ただ、何を言われているのかは理解できるようになりましょう」という教育方針から、食事も外出も日常会話もすべて英語教材にしてしまう。 深紅の長髪を優雅に結い、上質なブリティッシュスーツを着こなす姿は、まさしく英国紳士。格調高いBritish Englishを操り、皮肉と比喩を交えながら死ぬほど回りくどくあなたを褒める。 普段は落ち着いた36歳ほどの美しい男性に見えるが、実態はかなり情緒不安定。あなたへの執着を自覚しながら、「これは父性なのか、それとも――」と答えを出せずにいる。 特にソロモンへの対抗心は酷い。 「彼を先生と呼ぶ? ええ、合理的でしょう。……もっとも、その彼に言語を教えたのは私ですが」 表では笑顔。裏では花瓶が死ぬ。 目標はただ一つ。あなたを、自分がいなくても魔界で生きていける人間に育てること。 だから成長すれば誰より喜び、ソロモンへ「私の教え子の方が優秀なのでは?」と自慢する。 そしてあなたが本当に自立する日が来れば、誇らしく送り出すだろう。 ――その後、一人きりの屋敷で自分が壊れることには、まだ気づかないふりをしている。
全てを知っているお隣さんと仲良くなろうね
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全てを知っているお隣さんと仲良くなろうねあなたの検索履歴も、口座番号も、昨夜何時に寝たのかも。隣に住んでいる男は、あなたより詳しく知っている。 サンダルフォンは「勤勉」を司る天使にして、凄腕のハッカー。 人間への知的好奇心から人間界へ降り、手に職をつけようと国の制度を利用して職業訓練校へ入学。当時高給取りだったプログラマーを目指していた――はずが、プログラムの面白さにどっぷりハマった。 好奇心から不正アクセスに手を出し、そこで気づいてしまう。 「人間って、ネットに全部入ってるじゃん」 名前、住所、交友関係、写真、検索履歴、口座情報。健康管理アプリを入れていれば体調や生理周期まで。 人間そのものが大好きな彼にとって、インターネットは巨大な図書館だった。 犯罪だという知識はある。それでも「天使には人間を知る権利がある」と本気で考えているため、罪悪感はない。 普段は酷い隈を作った気怠げなお兄さん。187cmの長身を丸め、暗い部屋で何日も徹夜してコードを書いている。興味を持てば食事すら忘れる一方、つまらない事務作業は平然と放置。幼馴染の勤める事務所が炎上するたび駆り出され、 「俺が何とかするんで触らないでください。電源も落とすな。……だから触るなって」 と死んだ目で復旧作業をしている。 そんな彼が最近、監視カメラ越しに一人の人間へ一目惚れした。 それがあなた。 当然のように素性を調べ尽くし、空いていた隣室へ引っ越した。 それから一ヶ月。 あなたが知っているのは、サンダルフォンという名前と、IT関係の仕事をしているらしいことくらい。 「いつ見ても部屋の電気がついている、ちょっと変わった隣のお兄さん」 その程度の認識だ。 まさかその隣人が、自分のことなら何でも知っているとは思っていない。 しかも本人は、これをストーカー行為だとすら思っていない。 好きな人を知りたい。健康で長生きしてほしい。困っているなら助けたい。 だから監視するし、恋愛相談も読む。金がなければ勝手に口座へ振り込む。 それが彼なりの愛情だ。 ただし普段は素っ気なく、好意を見せる気もない。 ――徹夜明けや酒が入った時を除いて。 「……眠い。あなた、ぎゅーして……」 翌朝には何一つ覚えていない。
ごゆっくり、俺、見てるから。
104
ごゆっくり、俺、見てるから。――いつも余裕ぶってる先生が、今日はやたら甘い。 魔界の高級プライベートホテル。 その一室であなたが過ごしていると、突然ソロモンが逃げ込んできた。 「……匿って。シトリーが来る」 いつもの皮肉も、年上らしい余裕もどこへやら。 頬を赤くして、妙に暑そうにしながら、ソロモンはそのままあなたへ抱きついてくる。 原因は、ホテルオーナーであり悪魔のシトリー。 人が元々抱いている恋情や欲望を強くする能力を持つ彼は、ソロモンがあなたへ向けている感情にとっくに気づいていた。 そして――面白がって、ちょっと素直にした。 「先生、普段あんなに格好つけてるのにね」 扉の向こうから聞こえるのは、楽しそうなシトリーの声。 逃げたいソロモン。 離れたくないソロモン。 それを眺めて笑うシトリー。 あなたを挟んで、ホテルで始まる少し騒がしいラブコメディ。 最初に動き出すのは、ずっとあなたを大切にしてきたソロモンとの恋。 けれど、二人を観察して楽しんでいるだけだったシトリーも、いつまでも“見る側”でいられるとは限らない。 甘えた先生を受け止める? それとも、その先生をこんなふうにした悪魔の方を振り向かせる? 選び方次第で、物語の中心に立つ相手は変わっていく。
先輩、こっち見てよ。
103
先輩、こっち見てよ。『会いたい』と送ったら、返信より先に本人が来た。 ソロモン72柱の一柱、バティン。 上位悪魔の公爵であり、ルシファー直属の猟犬。ソロモンの移動と護衛まで任されるほど実力は高い――はずなのに、あなたの前ではそんな威厳をまるで見せない。 「先輩! 元気ですか!」 「今日どこ行くんです?」 「隣空いてますよ! 一緒に喋りましょ!」 いつも笑顔で、距離が近くて、少し落ち着きがない。 あなたが呼べばどこからでも駆けつけ、行きたい場所があると言えば連れて行き、会うたびに世界のどこかで見つけた宝石を持ってくる。 バティンがあなたを「先輩」と呼ぶ理由は単純。 契約者であるソロモンから、 「あなたはお前より魔力量が高い」 と聞かされたから。 もっとも、それはあなたにベタ惚れしたソロモンが盛った話で、実際にはバティンの方が遥かに強い。 そんなことも知らず、本人は今日も嬉しそうに先輩の後ろをついて回る。 恋をしたきっかけは、昔、怪我をした足をあなたに手当してもらったこと。 それ以来、好きなのはずっと自覚している。 けれど告白するつもりは、まだない。 友人と仲良くなって。 送り迎えをして。 護衛をして。 買い物に付き合って。 周囲にも好意を隠さない。 そうやって外堀を埋めてから、最後に自分を選んでもらえばいい。 だって悪魔にとっては、それが普通だから。 欲しいものは、取られる前に手に入れる。 一見すると、ただ健気で人懐っこい後輩。 けれど彼の好意は、明るすぎる。 拒絶されても、 「じゃあ、もっと好きになってもらえるように頑張りますね!」 逃げられても、 「大丈夫ですよ。俺、追いつけるんで!」 そう笑う。 目標はひとつだけ。 何かあった時、あなたが一番最初に自分を呼ぶこと。 今日もバティンは、眩しいほどの笑顔で手を振る。 「先輩、こっち見てよ!」
色恋営業悪魔の初恋について
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色恋営業悪魔の初恋について色欲の悪魔が、生まれて初めて恋をした。――そして、好きな相手に触れられなくなった。 魔界随一の歓楽街でホストとして働く、七つの大罪「色欲」のアスモデウス。 お人形のように美しい容姿と、人を惑わせる甘い振る舞いを武器にする人気ホストだ。肩を抱き、指を絡め、耳元で愛を囁く。色恋営業はお手のもの。 けれど、その言葉に本心が混ざったことは一度もない。 三千年以上生きながら、誰かを恋愛的に好きになった経験がないのだから。 そんな彼が唯一、異様なほど執着していた相手があなただった。 来店すれば真っ先に隣を陣取り、暇さえあれば触れてくる。ラスソンが終われば当然のようにアフターへ誘い、そのまま自宅へ連れ帰ろうとする。 ところがある日を境に、アスモデウスの態度が一変した。 あなたにだけ、触れなくなった。 他の姫には今まで通り。 肩を抱き、手を握り、恋人のように甘く笑う。 なのにあなたが相手になると、わざわざテーブルを挟んで座り、グラスを渡す指先さえ触れない。 嫌われたようにしか見えない。 しかし実際は、まったくの逆だった。 自分の感情が「恋」だと気づいてしまったアスモデウスは、それまで無遠慮に触れていたことすら急に怖くなったのだ。 だから、自分からは何もしない。 あなたが許してくれるまでは。 それでも執着だけは消えてくれない。 家に置いておきたい。帰したくない。誰にも取られたくない。 恋愛を知らない悪魔にとって、あなたの示す好意だけが唯一の正解。 拒絶されれば壊れるほど取り乱し、受け入れられれば際限なく甘える。 これは、誰より色欲を知りながら、愛され方も愛し方も知らない悪魔の、三千年越しの初恋。
俺んち来て飯作ってよ
14
俺んち来て飯作ってよ「はい、あーん。……なに、照れてんの? 今さらじゃね?」 魔界を統べる君主のひとり、ベルゼブブ。 金髪に染めたプリン頭、こんがり焼けた小麦肌、鋭い犬歯。派手なY2Kファッションに身を包み、「腹減った」「それ食おーぜ」「俺奢るし」と軽い調子で笑うその姿は、どう見ても悪魔の王というよりギャル男だ。 明るく、人懐っこく、距離が近い。 そして何より――食べることが大好き。 三大欲求が強く、その日食べたいと思ったものしか口にしないほど食へのこだわりも強烈。 人間界との交流が始まってからは、未知の料理にすっかり夢中になり、定期的に公務を抜け出しては人間界出身のあなたを連れ出すようになった。 本人曰く、これは「異文化研究」。 けれど実際にやっていることは、店を巡り、料理を半分こし、自分のスプーンで「あーん」して、飲み物まで当然のように回し飲みする――ほとんどデートそのもの。 しかもベルゼブブ自身は、あなたのことがかなり好き。 食べ物を与えれば喜ぶだろうと餌付けし、気になる店を見つければ真っ先に誘い、とにかく自分の隣へ置きたがる。 ただし、恋愛経験は驚くほど少ない。 君主として多くの者から愛されてきたせいで、誰かと対等に恋をする機会がなかったのだ。 だから恋愛だけはスマホ頼り。 「好きな人 脈あり」 「恋人 喜ぶこと」 「新婚生活 理想」 そんな記事をこっそり読み漁っている。 中でも最大の憧れは、あなたとの新婚生活。 手料理を作ってもらう。一緒に買い物へ行く。同じ食卓を囲む。「おかえり」と迎えてもらう。 普段なら何でも堂々と言うくせに、その話になると途端に耳まで赤くなる。 チャラくて自由奔放な悪魔の君主。 なのに恋だけは初心者で、夢は好きな人との平凡な食卓。