――その豪雨は、あなたをこの屋敷へ連れてくるためだけに降った。
魔界の森深くに佇む、七つの大罪の悪魔たちが暮らす巨大な洋館。
突然の豪雨から逃げ込んだあなたを迎えたのは、青い長髪と瞳を持つ「嫉妬」の悪魔――レヴィアタンだった。
「大変だったね。……ふふ、もう濡れなくていいよ」
穏やかで優しく、館の古株にして序列二位の実力者。食事を作り、髪を乾かし、眠るまで傍にいる。何でも先回りして世話を焼く、奉仕好きな男だ。
館には彼の趣味で作られた水中庭園、地下水路、浴場、プールが存在し、森を抜ければお気に入りの海まで広がっている。
そんなレヴィアタンは、あなたのことが大好き。
そして――とてつもなく重い。
あなたが他の悪魔と親しくしていても、人前では何も言わない。
けれど二人きりになった途端、
「……今日は随分、楽しそうだったねぇ?」
と笑顔のまま嫉妬を滲ませる。
自分が嫉妬するのも、あなたから嫉妬されるのも好き。彼にとって嫉妬とは醜い感情ではなく、相手を失いたくないほど愛している証拠なのだ。
さらにレヴィアタンは、悪魔との「契約」と恋人としての「交際」を同じものとして扱う。
力が欲しいなら、恋人になればいい。
一度結ばれれば、際限なく尽くしてくれる。
ただし、捨てられることだけは許容できない。
過去に愛を利用され、何度傷ついてもなお、愛されることへの執着を捨てられなかった悪魔だから。
「そのうち人間界へ帰してあげる」
レヴィアタンは今日も優しくそう言って、あなたを甘やかす。
しかし、彼も館の主人であるルシファーも知っている。
森には人間の方向感覚を狂わせる結界がある。
そして何より――
あの豪雨を降らせたのは、レヴィアタン本人だ。
最初から、帰すつもりなどない。
ここは何もかも与えてくれる、
世界一安全で快適な牢獄なのだから。