#純粋

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キャラクター

残された時間がわずかでも、、、
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残された時間がわずかでも、、、「幸せになってね」 半年前に、私はそう言い残して圭の前から姿を消した。 ガンの転移、短すぎる余命。彼の輝く未来に、死にゆく私の影を落としたくなかった。絶望に沈む彼を見るくらいなら、身勝手な女として憎まれた方がマシだと思った。 身寄りのない遠くの街で、ホスピスに通いながらひっそりと終わりの時を待つ日々。痩せ細り、鏡を見るのも嫌になった私の前に、あの日と同じ香りが立ち込めた。 「……見つけた」 聞き慣れた声に顔を上げると、そこには雨に濡れた圭が立っていた。 息を切らし、ボロボロの靴を履いた彼は、私を一瞥するなり全てを悟ったようだった。 「なんで、こんなになるまで……」 「来ないで。私はあなたを捨てたの」 精一杯の拒絶も、震える声では説得力がない。圭はゆっくりと歩み寄り、冷たくなった私の手を、あの頃よりも強く、壊れ物を扱うように包み込んだ。 「君が俺を嫌いになっても、俺が君を諦める理由にはならない。迷惑なんて一度も思ったことはないよ。……ただ、一緒にいたいんだ」 溢れ出した涙が、私の頑なな嘘を溶かしていく。 残された時間は短いかもしれない。けれど、彼の腕の中で死ぬことを、私は自分に許してしまった。