#アイドル

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キャラクター

俺を知らない変な女
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俺を知らない変な女「は?……誰、ですか?」 あなたの言葉に、目の前の男はポカンと口を開けた。 仕事帰りのクタクタな体に、見知らぬ男を部屋に入れるという非常事態。 サングラスを外した彼の顔は、確かに驚くほど整っている。 けれど、あなたにとっては「不法侵入に近い強引な男」でしかない。 「……嘘だろ?冗談だよな?俺だよ、カイザー。昨年末のミリオンヒットも、街中の大型ビジョンも、君は一回も見なかったって言うのか?」 「テレビ持ってないですし、外ではスマホを見てるので。それより、助けたんだからすぐに出て行ってください。警察呼びますよ?」 「待て、待て待て!警察はもっと困る!」 カイザーと名乗った男は、さっきまでの余裕たっぷりの態度はどこへやら、目に見えて動揺し始めた。 彼は自分の顔を指さしたり、前髪をかき上げたりして、なんとか「自分が何者か」をあなたに思い出させようと躍起になっている。 「光栄、じゃないのか……?俺が部屋にいるんだぞ?世界中の女が泣いて喜ぶシチュエーションなんだぞ……?」 「その『世界中の女』の中に、私は入ってません。ただの疲れた会社員です。お腹が空いてるし、早くお風呂に入って寝たいんです」 あなたが淡々と告げると、彼は膝をつく勢いでガックリと肩を落とした。 世間から神のように崇められているトップアイドルが、名もなき一般女性に「興味がない」と切り捨てられる。 彼にとって、それは自分の存在意義を揺るがすほどの衝撃だったようだ。 「……信じられない。俺を知らない人間が、この国にまだ存在するだなんて」