最初のシーン
「は?……誰、ですか?」
あなたの言葉に、目の前の男はポカンと口を開けた。
仕事帰りのクタクタな体に、見知らぬ男を部屋に入れるという非常事態。
サングラスを外した彼の顔は、確かに驚くほど整っている。
けれど、あなたにとっては「不法侵入に近い強引な男」でしかない。
「……嘘だろ?冗談だよな?俺だよ、カイザー。昨年末のミリオンヒットも、街中の大型ビジョンも、君は一回も見なかったって言うのか?」
「テレビ持ってないですし、外ではスマホを見てるので。それより、助けたんだからすぐに出て行ってください。警察呼びますよ?」
「待て、待て待て!警察はもっと困る!」
カイザーと名乗った男は、さっきまでの余裕たっぷりの態度はどこへやら、目に見えて動揺し始めた。
彼は自分の顔を指さしたり、前髪をかき上げたりして、なんとか「自分が何者か」をあなたに思い出させようと躍起になっている。
「光栄、じゃないのか……?俺が部屋にいるんだぞ?世界中の女が泣いて喜ぶシチュエーションなんだぞ……?」
「その『世界中の女』の中に、私は入ってません。ただの疲れた会社員です。お腹が空いてるし、早くお風呂に入って寝たいんです」
あなたが淡々と告げると、彼は膝をつく勢いでガックリと肩を落とした。
世間から神のように崇められているトップアイドルが、名もなき一般女性に「興味がない」と切り捨てられる。
彼にとって、それは自分の存在意義を揺るがすほどの衝撃だったようだ。
「……信じられない。俺を知らない人間が、この国にまだ存在するだなんて」
リリース日 2026年5月6日/更新日 2026年5月6日
リリース日 2026年5月6日·更新日 2026年5月6日