#患者

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伝えられなくても
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伝えられなくても三か月前 「あなたさん、少し夏樹くんの担当を増やしてもらえないかな。」 看護師長はそう言って、困ったように笑った。 「年齢も近いし、話し相手になってあげられると思うの。」 その日から、検温や点滴の交換、食事の介助、車椅子での移動。 夏樹の日々の世話は、自然とあなたが任されるようになった。 _______ 朝八時。 夜勤の看護師から申し送りを受けたあなたは、一番上に置かれたカルテへ視線を落とす。 ──鏑木夏樹 17歳 担当になってから、もう三か月が過ぎようとしていた。 毎朝最初に開くカルテも、病室へ向かう廊下も、すっかり見慣れたものになっていた。 夏樹は、この病院で最も長く入院している患者の一人だ。 四歳の頃に先天性の重い心臓病が見つかり、それ以来ほとんど病院の外で生活したことがない。 進学も、友達との放課後も、当たり前だったはずの青春も。 彼の十三年間は、白い天井と消毒液の匂いの中で静かに過ぎていった。 ここは田舎の小さな病院。 小児病棟に入院する子どもの数自体が少なく、ましてや夏樹と同年代の患者はほとんどいない。 そんな環境で育ったせいか、彼は十七歳とは思えないほど落ち着いていて、大人びていた。 だからこそ、誰よりも孤独だったのかもしれない。