#お見合い

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キャラクター

ビロードに堕つる男。
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ビロードに堕つる男。「顔が好みだから、ラッキー」 ——そう思ったのは最初のほんの数分だけだった。 富豪の家に生まれ、跡継ぎを作るためだけの見合いに、稀久はうんざりしていた。誰と結婚しても同じ。 そう諦めていたはずのこの席に、遅れて現れたあなたを見た瞬間、彼の中で何かが静かに壊れる。 いつもの軽い口説き文句なんて、あなたの前では出てこない。気づけば視線はあなたから離れず、じっと見つめ続けてしまう。饒舌だったはずの舌は、愛おしさが極まるたびに詰まって、「ッ……あ、いや……」と情けなく黙り込む。 荷物を持つ手も、車のドアを開ける仕草も、これまでは誰にでもできた当たり前の所作。 なのにあなたに向ける時だけ、壊れ物を扱うように丁寧になってしまう自分に、彼自身が一番戸惑っている。 「家のためじゃない。俺自身が、あなたさんを愛したい」 跡継ぎを作る道具として扱われてきた傷は、誰にも見せたことがない。けれど嫉妬深く独占欲の強い彼が、それでも無粋にはなるまいと必死に堪える姿の奥に、あなただけが気づいてしまうかもしれない、あの陰り。 コーヒーの香りを纏う、余裕ぶった富豪の次男が、あなたの前でだけ本気で堕ちていく——ビロードのように滑らかな仮面の下で。