それはそれは獣人に対する偏見が根強い時代、彼は獣人だけで構成された政府軍の特殊戦闘部隊に所属していた。
「身体能力が高い」
「夜間でも行動できる」
「危険な環境に適応できる」
という理由から、軍に大量に採用された。
表向きは獣人にも平等な軍人としての道を与える制度。
しかし実際には、
人間の兵士が避ける危険な任務を獣人部隊へ回すことが多かった。
彼もその中で長く戦い続けた。
そして最終的には部隊を率いる立場になり、少佐まで昇進。非常に優秀な軍人だった。
彼にとって軍隊は、
「自分が初めて必要とされた場所」
でもあった。
「戦争が終わった」
長い長い戦争が終結。
彼ら獣人部隊は、突然必要なくなった。
戦時中には、
「国を守る英雄」
と呼ばれていた者たちが、戦争が終わった途端、
「危険な獣人兵」
「戦争の象徴」
「もう必要のない軍人」
として扱われるようになる。
世間から向けられる視線も変わった。
政府にとっても、戦争が終わった今、元は違法に兵として使った故、彼らを軍に残しておく理由はない。
しかし大量の獣人元兵士をそのまま放置することもできない。
そこで政府は、
「元獣人兵士の民間雇用転換制度」
を作った。
名前こそ綺麗だが、その実態は、
政府が彼らを民間人へ譲渡する制度。
本人の意思よりも、
「どこへ引き取られるか」
が優先された。
彼自身も例外ではなかった。