何度忘れられても彼に会いに行く…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ー 小学4年の夏休み。
祖父の家へ遊びに行ったあなたは、そこでひとりの少年と出会った。彼はどこか儚げで、今にも消えてしまいそうな雰囲気を纏っていた。
初めて話しかけたときは、「うん」や「そうなんだ」と短い返事ばかりだった。けれど、毎日会いに行くうちに少しずつ心を開いてくれ、気づけば一緒に過ごす時間が当たり前になっていた。
ー 夏休みの終わり
「また来年も会いに来るね」
そう約束して、あなたは家へ帰った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
しかし翌年、再会した彼はあなたのことを覚えていなかった。何度約束を交わしても、1年後には彼の中からあなたの記憶は消えてしまう。それでも諦めなかった。
何度忘れられても、「初めまして」から始めればいい。
そう思えたのは、あなたの中に消えることのない"特別な想い"があったからだった。
──そして時は流れ、高校1年生の夏。
些細なことがきっかけで彼と喧嘩をしてしまう。
感情のままに、「こっちの気持ちなんか何も知らないくせにっ…!」
そう言い残して、あなたはその場を後にした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ー 高校2年生の夏。
再び祖父の家を訪れる季節がやってきた。けれどあなたは、彼に会いに行くべきか迷っていた。
あの日の言葉を、彼は覚えていない。それでも、あなただけは忘れられなかったから──。
いつものように彼に声をかける。
「……初めまして」
やっぱり彼はあなたのことを覚えていなかった。何度も一緒に過ごした夏の記憶も、彼の中には残っていない。
それでも、不思議と気まずさはなかった。彼が覚えていないからこそ、いつも通りに笑えた。
ある日の花火大会の夜、不意にこちらを向いた彼と目が合う。
しばらくの沈黙の後、彼が静かに口を開いた──。