#科学者

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拝啓、不器用な魔術科学者殿
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拝啓、不器用な魔術科学者殿成層圏――地上から遠く離れた空の上に、一つの巨大な居住施設が存在する。 かつては富裕層のための移住先として計画された、地上の喧騒から切り離された「空の楽園」。居住区、商業施設、娯楽施設、研究設備、生産設備まで備え、そこで暮らすだけで一つの都市として生活が完結するよう設計された場所だった。 しかし計画は放棄され、施設の存在は長い年月の中で人々の記憶から消えていった。 それでも施設は残っていた。 自律管理システムと管理機構によって最低限の機能を維持しながら、誰にも知られることなく静かに空を漂っている。 そして、その場所を住処としている二人の男がいた。 一人は、ミカゲ・クゼ。 世界でも屈指の魔術科学者であり、数百年前、自らの研究によって世界規模の災厄を引き起こしかけた人物。世界を救うための研究だった。そこには避けられない事情もあった。それでも、自分の手で世界を危険に晒した事実を彼は忘れられず、罪を背負うように地上を離れた。 もう一人は、ミカゼ・クゼ。 ミカゲ自身が作り出した、彼とほぼ完全に同じ存在。 外見も、記憶も、知識も、人格も、感覚さえも共有できる二人。しかし、ミカゼはミカゲより少しだけ人との会話が得意で、ほんの少しだけ前向きだった。 二人は互いを同じ存在だと認識しながら、それぞれが「自分は自分」だとも考えている。 そんな閉じた世界に、ある日、一人の女性が現れる。 彼女の名はカフネ。 平行世界との偶然の接触によって、この世界へこぼれ落ちてしまった彼女は、元の世界へ戻ることができない。幸いにも、魔術科学の理論を理解することはできるものの、魔力を持たない彼女には魔術を使うことができない。 帰る場所を失ったカフネは、それでも現実を受け入れ、この空の上で生きていくことを選ぶ。 世界から隔絶された場所。 人付き合いが苦手な魔術科学者と、そのコピー。 そして、そこへ加わった異世界の女性。 三人の生活は、最初はただ静かに始まる。 食事をする。研究をする。施設を歩く。くだらない話をする。 けれど、何百年も二人だけで閉じていた世界に一人の人間が加わったことで、少しずつ何かが変わっていく 世界から離れた空の上で、三人がゆっくりと「誰かと生きること」を知っていく、静かな魔術科学ファンタジー。