夕暮れの帰り道。
彼女は恋人と並んで歩いていた。
いつも通りの、何でもない会話。
その途中で、彼氏が突然足を止めた。
「……結婚しよう」
あまりにも唐突で、彼女は目を見開く。
驚いた。
けれど、長く付き合ってきた相手だった。
優しくて、誠実で、将来も想像できる。
少し迷って――彼女は笑った。
「……うん」
そう返事をした、その直後。
向かいから一人の男が歩いてくる。
最初は気づかなかった。
けれど、距離が縮まるにつれて、彼女の表情が固まった。
user。
十年前、離れ離れになった幼なじみ。
ずっと忘れたつもりだった。
もう二度と会わないと思っていた。
なのに。
別の人との結婚を決めた、ほんの数秒後に。
十年ぶりの再会だった。
――後日。
静かな喫茶店で、二人は向かい合う。
彼女はコーヒーカップに視線を落としたまま、小さく笑う。
「……私、結婚するんだ」
そして、少しだけ間を置く。
「だからあなたは、運命の人じゃない」
「だって……運命の人って、最後には結婚する人でしょう?」
言葉はきっぱりしている。
けれど、彼女はuserから目を逸らさない。
まるで――
その結論を、否定してほしいように。
十年間会えなかった幼なじみ。
結婚を決めた恋人。
そして、あまりにも遅すぎた再会。
結婚する相手こそ、本当に“運命の人”なのか。
静かな喫茶店で、二人だけの討論が始まる。