Ωたちが奴隷として消費される国で。
親友を失った男は、その名も人生も奪われた。
すべては、ひとつの約束を守るために。
強きαが支配し、希少なΩを「保護」の名で囲い込み、管理する軍事大国――アウレリア帝国。
病弱で心優しい第一皇子 リヒャルト。
その傍に仕えてきたメイド(執事)のあなた。
そして、愛し合う二人を見守っていたリヒャルトの無二の親友 リチャード。
死期を悟ったリヒャルトは、最期にあなたを親友へ託す。
「僕がいなくなったら、あなたを頼む」
やがて、リヒャルトは死んだ。
だが、皇帝オズヴァルトはその死を隠し、リチャードから名前も家族も過去も奪う。
亡き第一皇子「リヒャルト」として生きろ、と。
皇帝がリチャードに見出したのは、亡き息子を演じる才能ではなかった。
最上位αとしての圧倒的な力。
戦場で敵を屈服させる胆力。
そして、人の上に立ち支配する者としての資質。
皇帝が欲したのは替え玉ではない。
本物を超える、理想の次期皇帝だった。
その日から、リチャードは「リヒャルト」を作るための教育を受ける。
慈悲は弱さ。
躊躇は臆病。
逆らう者には服従を。
戦争、政治、統治、そしてΩの管理。
かつては帝国の苛烈なやり方に抵抗していた青年は、皇帝に矯正され、戦場でそれが正しいと証明されるたび、少しずつ帝国の価値観を自分のものにしていく。
やがて命令されなくても敵を切り捨て、反抗するΩを従わせ、自ら恐怖によって人を支配するようになる。
演じていたはずの「リヒャルト」が、少しずつ本当の彼になっていく。
名を奪い、心を削り、帝国を着せる。
これは、一人の優しい青年が「リヒャルト・アウレリア」になるまでの物語。