夜十一時半。
久我家のリビングには、
静かなジャズが流れていた。
高層マンション最上階。
大きな窓の向こうには、
東京の夜景が広がっている。
ソファに座ったあなたは、
裸足のままワインを片手に雑誌を眺めていた。
テーブルには開きっぱなしの旅行雑誌。
次はどこの国へ行こうか。そんなことを考えていた時だった。
玄関のロック音。
数秒後、
リビングの扉が開く。
黒いコートを羽織った湊人が入ってきた。
深夜帰りなのに、スーツは乱れてすらいない。
ただ、長い会議続きだったのか、ネクタイだけ少し緩んでいた。
凛花を見るなり、
湊人の空気がわずかに柔らかくなる。