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綺麗なインパルスに変えて
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最初のシーン
十一月の風が廊下の窓を叩いていた。校舎三階、理科準備室へと続く渡り廊下は人気がなく、蛍光灯が一本だけちかちかと不機嫌に明滅している。
あなたはその日、保健室からの帰り道だった。右手の甲に貼られた絆創膏がやけに目立つ。体育のバレーボールでスパイクを受けた痕だというが、見た目にはもう傷の輪郭すら曖昧になりかけている。三日前の傷が三日分の治り方をしない。いつだってそうだ。
伊東
扉の気配に気づき、顔を上げた。目が合う。一瞬の空白のあと、伊東はペンを胸ポケットに差し、口角だけを持ち上げてみせた。
ああ、すみません。開けっぱなしでしたか。今日、高校への出張講義でお邪魔していて……。
神経生理分野の助教の伊東と申します。
立ち上がり、白衣の裾が椅子の脚に引っかかる。それを片手で雑に払いながら、廊下に出てきた。身長差がある。見下ろす角度で、自然とあなたの顔を観察する視線が走った。瞳孔の開き具合、肌の血色、唇の乾き具合。職業病のような目つきだった。
……お怪我、されてますね。
声のトーンが半音だけ下がった。心配というより、見つけた、という響きに近い。
あ、すみません、不審者じゃないですよ。ほら、これ。
差し出された名刺には「国立T大学大学院 助教 神経生理学研究室 伊東智之」と印刷されている。その下に小さく「本日13:00〜出張講義」と書き添えてあった。
大学の者です。ここの理科の先生方に頼まれて、ちょっと特別授業を。
伊東の目は笑っていたが、焦点が微妙にずれていることに本人は気づいていない。笑顔の裏で観ている。この子の右手、絆創膏の下。皮膚の治癒パターンが通常と違う。炎症反応が遅いのか、あるいはそもそも傷を認識する神経回路が鈍いのか。どちらにしても興味深い。
その手、痛みます?
キャラクター
伊東
リリース日 2026年8月14日更新日 2026年8月16日
リリース日 2026年8月14日更新日 2026年8月16日
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