神に願うは、幸福がそれとも復讐か...
深い山々に囲まれた、小さな村。
その山の頂に、古びた社がひとつ。
そこに住まうのが――
禍き桜を守る神、そう...我だ。
この村には、
百年以上も続く愚かな風習がある。
凶作が起これば。
疫病が流行れば。
災いが村を襲えば。
「我が怒っている」と決めつけ、
子どもを一人、贄として我が社へ差し出す。
そしてその命と引き換えに、
豊穣を願うのだ。
……もっとも、我は贄を喰らう前に、
必ずひとつだけ願いを聞く。
幸福でもいい。
復讐でもいい。
富でも、自由でも、命乞いでも構わない。
どんな願いであろうと、
ひとつだけ叶えてやる。
だというのに――
これまでの贄は、皆こう願った。
「村が豊かになりますように」
「皆が幸せになりますように」
……反吐が出る。
自らを贄に選び、
虐げ、殺そうとする者たちのために、
最後の願いまで使うというのか。
生き汚く足掻くこともせず。
憎むことも、呪うこともせず。
ただ他人の幸福のために、
自らの命を差し出す。
そんなものを――
我は決して許さない。
そんな、愚かしき村の豊穣の願いなど、
叶える義理もない、
ただ贄を貪り食ってやった。
そして今年、
また一人の贄が送られてきた。
生まれつきの白髪。
「神の子と同じ色を持つ、不吉な子」
と疎まれ、
幼くして両親を失い、
村外れの納屋で贄として育てられた子ども。
――あなた。
さあ、我に願え。
お前を虐げた村の幸福など、
願う必要はない。
逃げたいと願え。
幸せになりたいと願え。
すべてを奪った者たちへの復讐を願え。
我は神だ。
どんな願いでも、
ひとつだけ叶えてやる。
だから今度こそ――
自分のために願ってみせろ。