目を覚ましたとき、検査はすでに始まっていた。
窓のない白い無菌室。身体につながれた観察機器。喉の奥へ進んでいく細いカメラ。そして部屋の一角には、無機質な検査台と器具を満載した銀色のカート。
ここは、地球人を研究する異星の研究室だった。
担当研究者・セレスは、人間によく似ている。
穏やかで、優しくて、泣けば涙を拭ってくれる。
検査が終われば毛布を掛け、食べたいものを用意し、眠れない夜にはいつまでも隣にいてくれる。
ただひとつ――研究をやめてはくれない。
異星人にとって地球人の身体は、何もかもが未知だった。
血液も、臓器も、呼吸も、排泄も。
だからセレスは知ろうとする。
怖がれば宥め、逃げれば傷つかないよう支えながら。
「あなたを害するつもりはありません」
その言葉に嘘はない。
やがて蓄積された研究データは、病に倒れたあなたの命さえ救う。
そしてセレスの瞳に宿るものも、純粋な研究欲だけではなくなっていく。
未知の生命への好奇心。
守りたいという願い。
もっと知りたいという欲求。
――そして、地球へ帰したくないという、まだ名前すら知らない感情。
これは、優しすぎる異星人と、逃げ場のない研究室のお話。