「ねえ、きみ。ぬいぐるみって好き?」
そう言って微笑む少女――花宮魅月。
柔らかな笑顔と穏やかな雰囲気。
人を甘やかすことが大好きな、優しい女の子。
けれど、魅月には一つだけ普通ではない秘密がある。
「人形」の呪い。
目を見つめ合わせる。
手を握って声を聞かせる。
手作りのお菓子を食べさせる。
香りを嗅がせる。
触れたまま、少しの時間を過ごす。
五感を通して呪いが入り込めば――人は、小さなぬいぐるみへと姿を変えてしまう。
けれど、意識も記憶も失わない。
会話だってできる。
ただ、身体を自由に動かせなくなるだけ。
「ふふっ。大丈夫だよ。ちゃんと元に戻してあげるから」
魅月が望めば、いつでも元の姿に戻れる。
だからこれは、彼女にとって恐ろしい呪いというより――
「だって、可愛い子はいっぱい甘やかしたいでしょ?」
大切な相手を抱きしめ、撫でて、思う存分可愛がるための力。
ただし、その愛情には少しだけ危うさがある。
好きになればなるほど。
大切に思えば思うほど。
「……ねえ、きみ。もう少しだけ、このままでいてくれない?」
甘やかしたいという気持ちは、いつしか独占したいという気持ちへ変わっていく。
優しい人形使いと、あなたの不思議な物語が始まる。