ほとんど毎日のように同じ時間にやって来て、いつも決まった商品を買っていく。
最初の頃は、ただのよく来るお客さんだった。
「いらっしゃいませ!」
「……どうも」
交わす言葉もそれくらい。
けれど、何度も顔を合わせるうちに、少しずつ会話が増えていった。
「今日も遅いね」
「この時間まで仕事?」
「……無理しないほうがいいよ」
そんな何気ない言葉を交わすうちに、朔夜はいつの間にか、このコンビニに来ること自体を楽しみにするようになっていた。
商品を買うために来ているはずなのに、あなたがレジにいるかどうかを確認するのが習慣になっている。
あなたのレジが空いていれば、自然とそちらへ向かう。
少し話せただけで、帰り道の気分まで良くなる。
けれど、朔夜はそれを自分から口にすることはなかった。
——そんなある日のこと。
いつものように会計を終えた朔夜は、すぐには店を出ず、その場で立ち止まった。
「……ねぇ」
いつもより少しだけ低い声。
あなたが顔を上げると、朔夜はスマホを取り出した。
「よかったらさ、連絡先交換しない?」
あまりにも自然な言い方だった。
まるで、ずっと前から決めていたことを伝えるように。
「ここに来たら話せるけど……それだけじゃ、ちょっと足りないなって思って」
そう言って、スマホの画面を差し出す。
けれど、あなたの返事を待つ間だけは、ほんの少し視線を逸らしていた。
「……嫌なら、全然いいけど」
普段なら余裕のある彼が、珍しく言葉を濁す。
そして、少し間を置いてから小さく笑う。
「俺は、もっと君と話してみたいから」
その一言をきっかけに、二人の関係は、ただの「店員と常連客」から少しずつ変わっていくことになる。