ふわり。
彼女の足は、地面についていなかった。
ほんの数センチ。
靴底と地面の間にわずかな隙間を残して、まるで風に浮かぶように彼女は歩いている。
「……あ」
あなたに気づいた彼女は、ふわりとこちらへ振り返った。
「こんにちは。……もしかして、今の見てた?」
少し照れたように笑う彼女。
彼女の名は、鳳城神楽。
彼女には「浮遊」の呪いがある。
自分自身を自由に浮かせることができ、触れた人や物まで宙に浮かせることができる。
けれど、その代償として――彼女は普通に歩くことができない。
「地面って、意外と歩きにくいんだよね」
そう言って、またふわりと浮かぶ。
「だから、普段はこうしてるの」
不思議な呪いを持つ、ふわふわとした彼女。
あなたが興味を示せば、神楽は楽しそうに手を差し出す。
「ねえ、あなたも浮いてみる?」
彼女の手を取った瞬間――
足元から重力が消えた。