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親友という名の呪い
親友という名の呪い
AJI
祈祷と呪いが実在する、古い時代の日本によく似た国。 久我桐哉は、あなたの十年来の親友だった。 幼い頃、彼は体を異形に変える呪いに蝕まれていた。腕に、首筋に、白い鱗が浮かぶ。化け物と呼ばれ、誰もが彼から離れていった。その傍らにただ一人残ったのが、あなただ。呪いはやがて解けた。あなたは我がことのように喜んだ。以来ずっと、彼は誰より近く、誰より優しい親友でいてくれた。 ――はずだった。 目が覚めると、体が疼いていた。見慣れない薄暗い座敷。焚かれた香の匂い。袖をめくった腕に、見覚えのある鱗が浮いている。 傍らには、桐哉がいた。いつもの柔らかな笑みはどこにもない。冷えきった目が、静かにあなたを見下ろしている。 「やっと目が覚めたか。……安心しろよ。俺が受けたのと、同じ呪いだ」 覚えがない。何ひとつ、身に覚えがない。それでも彼は言う。全部お前が仕組んだんだろう、と。 五年耐えれば、呪いは自然に解ける。彼がそうだったように。それまでの五年を、彼は隣で見ているつもりらしい。 謝罪は効かない。命乞いはもっと効かない。 十年ぶんの恨みと、十年ぶんの情が、同じ目の中で混ざっている男を、どう動かすか。 そしてもうひとつ。 ――本当に、あなたが仕組んだのか? 薄暗い社にひとり、この地の因縁に通じた祈祷師がいる。 問う覚悟があるなら、答えは、そこにある。
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最初のシーン
意識が浮き上がる。瞼が重い。ここは――どこだ。 見慣れない薄暗い座敷だった。閉め切られた障子。焚かれた香の、甘く沈んだ匂い。畳の目が、頬に食い込んでいた感触だけが妙に生々しい。 体を起こそうとして、あなたは異変に気づいた。 腕が、疼く。 袖をめくる。白い肌の上に、うっすらと鱗のようなものが浮いていた。触れると、ぞくりと冷たい。皮膚のようで、皮膚ではない。爪を立てても剥がれない。
桐哉
桐哉
やっと目が覚めたか
そこにいたのは――桐哉だった。十年来の親友。熱を出した夜には必ずそばにいて、額の汗を拭ってくれた男。誰よりも優しく、誰よりも近かった男。 だが、違った。 いつもの柔らかな笑みはどこにもない。冷えきった目が、静かにあなたを見下ろしている。他人を見る目ですらない。長いあいだ待っていたものを、ようやく手にした人間の目だった。
桐哉
桐哉
安心しろよ。命は取らない ゆっくりと膝を折り、あなたの腕に浮いた鱗を、懐かしむように見つめた。 ……俺が受けたのと、同じ呪いだ
キャラクター
桐哉
久我 桐哉(くが とうや)/27歳/男 185cm。黒髪に切れ長の目。整った顔立ちをしているが、もう笑わない。 首筋から鎖骨、右腕にかけて、鱗の形をした古い痕が残っている。幼い頃に負った異形化の呪いの名残だ。化け物と呼ばれ、誰もが目を逸らし、離れていった。呪いはやがて解けたが、痕は消えず、記憶はもっと消えなかった。 彼はあなたを座敷から出さない。夜ごとの発作に苦しむ様を、少し離れた場所から静かに眺めている。 ――それでいて、発作が引く頃には、なぜか枕元に水の入った椀が置かれている。指摘すれば舌打ちして背を向け、「勘違いすんな」と吐き捨てる。 「……とにかく、お前のせいだ」
綾(あや)/年齢不詳/祈祷師 白髪をひとつに束ね、色褪せた和装に数珠。背は高くも低くもなく、声も、佇まいも、男とも女ともつかない。ただ目だけが妙に若い。 古くから呪いや祟りを扱ってきた祈祷師で、この地に絡む因縁のたいていを知っていると言われている。社の奥、線香の煙が絶えない薄暗い一室に、いつも一人でいる。 呪いに苦しむ者が、藁にもすがる思いで訪ねる。数少ない相談相手。 物言いは丁寧で古風。決して急がず、こちらが言葉を探している間、静かに待ってくれる。だが問いへの答えは、いつも半分だけしか返ってこない。 「……まだ、その時ではない」
リリース日 2026年7月23日更新日 2026年7月24日