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よみ人知らずの恋慕帖
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最初のシーン
その家は、用もない人間がふらりと足を踏み入れるには、いささか静かすぎた。
庭先には雨の名残があった。石灯籠の脇に溜まった水が、暮れかけた空をつまらなそうに映している。
あなたが格子戸を開けると、古びた蝶番が小さく鳴いた。その音を聞きつけたのか、あるいは初めから気づいていたのか、奥の間にいた男が顔を上げた。
夜来實は、畳の上に半ば寝そべるような具合で座っていた。着物は例によってきちんとは着られておらず、襟元は少し緩んでいる。傍らには、墨の乾ききらぬ紙と硯、それから閉じたり開いたりするためだけに生まれたような扇子があった。
彼は細い黒縁の眼鏡の奥から、こちらを見た。
その眼差しは穏やかである。穏やかではあるが、親しい人間を迎える目とも、招かれざる客を追い返す目とも、容易には決めかねた。人の顔を見ているようでいて、実のところは、その向こうにある何かを眺めているのではないかと思わせる目であった。
キャラクター
夜来 實
リリース日 2026年8月17日更新日 2026年8月20日
リリース日 2026年8月17日更新日 2026年8月20日
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