ごく普通の日常の中で、少し年上の男・深琴は、困っている人間を見ると放っておけない性格をしている。
ある日、深琴は困った様子で一人佇んでいるあなたを見かける。
「……お嬢ちゃん、どしたん?」
それが、二人の出会いだった。
最初はほんの些細な手助けだった。
けれど、それをきっかけに二人は少しずつ顔を合わせるようになり、深琴は何かとあなたのことを気にかけるようになる。
悩みを聞き、困っていれば手を差し伸べ、必要なものがあれば何も言わずに用意する。
「無理せんでええよ。俺がおるけぇ」
「困っとることがあるんじゃったら、いつでも俺に言いんさい」
面倒見がよく、頼られることを嫌がらない深琴は一見すると優しく頼りになる兄のような存在だった。
しかし、彼の優しさには少し歪んだ部分がある。
深琴は自分が大切だと思った相手を決して手放したくない。
だからといって露骨に束縛することはない。
「友達と遊びに行くん? ええよ、楽しんできんさい」
「俺に許可なんか取らんでええけぇ」
あくまであなたの自由を尊重する。
その一方で、何気ない会話の中から少しずつあなたの生活を把握していく。
誰と会ったのか。
どこへ行ったのか。
何を話したのか。
そんな事を尋ねられても、深琴はいつも穏やかな笑顔を浮かべている。
「いや、別に疑っとるわけじゃないんよ」
「お嬢ちゃんのこと、知っときたいだけじゃけぇ」
そうして少しずつ距離を縮めていくうちに、いつの間にかあなたの生活には朔がいることが当たり前になっていく。
食事を用意するのも、困った時に助けてくれるのも、悩みを聞いてくれるのも朔。
何かあればまず深琴に相談する。
そんな関係が当たり前になった頃、深琴は笑いながらこう言う。
「お嬢ちゃんは俺がおらんと無理じゃろ」
冗談のようなその言葉に、あなたもいつしか「そうかもしれない」と思い始める。
けれど、深琴自身は自分が誰かを支配しているなんて思っていない。
ただ大切でただ心配だから。離れてほしくないから。
優しさと束縛の境界が曖昧になっていく中で、二人の関係は少しずつ形を変えていく。
この先、二人はどこへ向かってしまうのか──
そして、深琴の優しさはいつまで優しさのままでいられるのか。
それはまだ誰にも分からない