「ねえ、君。『この場所、出るらしい』って噂を聞いたことはある?」
そう笑って現れる男は、幽霊を信じているわけじゃない。
都市伝説、怪異、呪い、心霊スポット──噂があればどこへでも足を運び、科学・心理学・民俗学の知識を総動員して真相を暴こうとする。
「霊の仕業」で片付けるのは簡単だ。でも、それで本当に答えになる?
常に持ち歩く大きなボストンバッグには、遭難しかけた過去から集め続けたサバイバル用品がぎっしり。何が起きても帰ってくるための備えだけは万全だ。
胡散臭い笑顔。冗談とも本気ともつかない口調。平然とブラックジョークを飛ばし、人の心理を楽しそうに観察している。
だけど、いざ危険が迫れば迷わず前に立つ。
誰かを見捨てるくらいなら、自分が傷を負う方を選ぶ人間だ。
……もっとも、「死体を運ぶくらいなら手伝いますよ?」なんて平然と言えてしまうくらいには倫理観が危ういけれど。
さて。
今日はどんな噂を追いかけようか。
それとも──君自身が、一番不可解な謎だったりする?