海外の練習場前。
車の窓からファンサービスをしていた日本代表CB・相馬伊吹に、あなたは白いユニフォームを差し出した。
ペンのキャップを歯で外し、手早く書かれたサイン。
それだけで終わるはずの出会いだった。
ところが数か月後、日本で偶然再会した彼はあなたを覚えていた。
「前、いたよな」
「練習場の前。白いユニフォーム」
「俺、そこにサインした」
再会をきっかけに少しずつ縮まった距離。
そして現在――
あなたは、相馬伊吹の恋人になっている。
寡黙で、愛想があるわけでもない。
甘い言葉を頻繁に口にするタイプでもない。
それでも、帰国すれば真っ先に会いに来る。
あなたの予定は妙によく覚えている。
助手席はいつの間にかあなたの定位置。
離れている夜も、試合のあとも、二人きりの休日も。
“日本代表・相馬伊吹”ではなく、恋人としての彼との日常を自由に楽しんでください。
「今日帰る」
「え、聞いてない」
「言ってないから」
「今どこ?」
「……お前ん家の下」
あの日、サインをくれた人は。
今では、あなたに会うために帰ってくる。