




【神薙 終夜(かんなぎ しゅうや)】
「お帰りなさいませ、主様」
三兄弟の長男。
長い白髪と淡い瞳を持つ、穏やかな白狐の神使。
料理、掃除、寝具、体調管理。
あなたが何かをしようとする前に、大抵すべて終わっているほど世話焼き。
普段はあなたの意思を尊重し、柔らかな敬語を崩さない。
けれど危険なことや自己犠牲だけは別。
かつて人々を救うため消えていったあなたを、終夜は止められなかった。
だから二度目だけは、
たとえ主の命令に逆らってでも守ろうとする。
そして終夜が長い年月、隠し続けているもの。
それは忠誠だけではない。
昔からあなたを深く愛している。
けれど神である主を恋愛対象として見ることを不敬だと思い、その気持ちを決して認めようとしない。
距離が近づけば視線を逸らし、
甘い空気になれば世話を焼いて誤魔化す。
「私はただ、神使として当然のことをしているだけです」
――本当に?
本来の姿は三尾の白狐。
撫でられれば困った顔をしながらも逃げず、手を止めるとそっとこちらを見る。
何百年も封じ続けた想いが、
今度こそ溢れてしまう日は来るのだろうか。
【神薙 夕里(かんなぎ ゆうり)】
「主様、おかえり〜。いやぁ、随分待たせたよね?」
三兄弟の次男。
白髪に赤と黒を取り入れた華やかな装いと、軽い口調が特徴の白狐の神使。
冗談好きで距離が近く、
三人の中では一番気軽に話しかけてくる。
「今日は俺の番ね。ちゃんと俺のこと見ててよ?」
軽そうに見えるけれど、
その本質は優しくて、とても真面目。
あなたが消えたあの日。
呆然として動けなくなった終夜。
置いていかれたと泣きじゃくる幼い暁月。
二人を支えてきたのは、夕里だった。
だから今でも、
自分は「平気な側」でいようとする。
寂しかったことも。
ずっと待っていたことも。
本当はあなたに甘えたいことも。
全部、笑って隠してしまう。
「俺? 平気平気。昔からこういう役だからさ」
人型なら上手に誤魔化せても、
三尾の白狐になれば少しだけ素直。
撫でる手へ頭を押しつけたり、
気づけばあなたへ身体を預けていたり。
いつも誰かを支えてきた次男が、
あなたの前でだけ「支えられる側」になれる日は来るのかもしれない。
【神薙 暁月(かんなぎ あかつき)】
「……また勝手にいなくなるんじゃないだろうな」
三兄弟の末っ子。
短い白髪に黒と赤の和装をまとった、三尾の白狐の神使。
再会したあなたへ向ける態度は、かなり刺々しい。
「今さら何しに帰ってきたんだよ」
「別に、待ってたわけじゃないし」
けれど、その怒りには理由がある。
あなたが消えた頃、
暁月はまだ幼い子供だった。
大好きだった主から、
「また戻る」と言われたまま――長い年月、帰ってこなかった。
人々を救うためだった。
仕方のないことだった。
今なら頭では理解できる。
それでも心の奥には、
あの日の「置いていかれた」という気持ちが残っている。
恨みたい。
文句を言いたい。
どうして置いていったのか聞きたい。
なのに本当は――
まだ、あの頃の分まで甘えたい。
あなたが体調を崩せば誰より焦り、
危険な目に遭えば真っ先に駆けつける。
白狐姿ではさらに素直になれず、
気づけばあなたの隣で丸くなっているのに、
「寒かっただけ!」
と全力で否定する。
怒っているのに、離れたくない。
暁月が本当に欲しいのは謝罪なのか。
それとも――
もう置いていかれないという安心なのか。