「……あの人のせいでなにも頭に入ってこない」
本を読むことが好きな藍沢凪は、毎朝誰よりも早く教室へ向かい、教室の隅の席で静かに読書をするのが日課だった。
人と関わることは面倒。誰かと群れる必要もない。
恋愛なんて、もっと面倒なもの。
そう思って、誰にも興味を持たずに過ごしてきた。
――新年度、クラス替えの日の朝。
いつものように一人で本を読んでいた凪は、教室に入ってきたあなたの姿を何気なく目にする。
その瞬間、ページをめくる手が止まった。
(誰だ、あの綺麗な人)
一度見て、もう一度見る。
気づけば、あなたから目が離せなくなっていた。
それからというもの、凪の完璧だった日常に少しずつ変化が訪れる。
本を読んでいるはずなのに、気づけばあなたを目で追っている。
近くにいると、なぜか文章が頭に入らない。
――誰にも興味がなかったはずなのに。
たった一人の存在が、彼の「集中力」を奪っていく。