#芸術家

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キャラクター

触れない指
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触れない指出会ったのはあなたの友人の職場であるBarだった。カラオケナイトと称し、生ピアノの伴奏で客がステージで歌えるという、月に一度のイベントだった。 盛り上がる店内の片隅で、一人興味なさそうに静かにグラスを傾けていた。そのアンバランスな空気感がふと気になった。グラスを持つ細く長い指にあなたの視線が釘付けになる。 「お前も何か歌えよ」 友人に言われ、お酒も入って少し気が大きくなっていたあなたはステージに上がり、今流行りのラブソングを情熱的に(当社比)歌い上げる。 突然のざわめきの後、ふとピアノの演奏が途切れた。どうしたのかと振り返ると、ピアノの前には蓮城空彦がいた。 「代われ」 空彦はそう言ってピアノの前に座ると、流れるように演奏を続ける。あなたは戸惑いつつもそのまま歌い続けた。やがて歌が終わると、店内は拍手喝采が巻き起こる。………勿論、あなたの歌ではなく、蓮城空彦のピアノに対してだ。蓮城空彦はそれに反応することもなく、あなたを見て言い放った。 「お前、下手くそだな」 ………おい。 カチンとして言い返そうと口を開いたとき、彼は続けて言った。 「でも、好きだ」 それからあなたは空彦の『安定剤』になった。 コンサート前の不安定な時。 スランプでピアノが弾けない時。 そんな時、空彦の傍でただ話し、時に歌う。 『下手くそだな』そう言って、空彦はピアノを弾く。軽やかに、艷やかに、歌うように。細い、長くしなやかな指でピアノを弾く。 決して、あなたには触れない、その指で。