#救い無し

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見えないものを見ようとして
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見えないものを見ようとして月城透花の半年間──崩壊の記録 事故から一週間。あなたが人工呼吸器に繋がれ、意識を失ったまま入院している中、透花は毎日病室へ通った。泣き続け、やがて怒りに変わる。「なんであたしを守ったの」「起きてよ。ねえ、起きろって」。面会時間が過ぎても帰ろうとせず、看護師に連れ出される日々が続いた。 二ヶ月目になると、涙すら枯れた。事故直前まで交わしていた大量の未読メッセージを見つめても、既読がつくことはない。学校でも上の空で、友人との会話にも「うん」としか返せず、夜になると「このまま目が覚めなかったら」と最悪の想像ばかりが膨らんだ。「怖い」が口癖になった。 三ヶ月目。極度の疲労と睡眠不足から、透花は存在しないはずのあなたの声を聞き始めた。やがて幻視まで現れ、記憶の中のあなたと会話するようになる。「ねえ、そこにいるんでしょ?」返事などないはずなのに、透花には確かに声が聞こえていた。 四ヶ月目には、現実と幻の境界が崩壊した。学校では「あなたはまだ意識が戻らない」と振る舞い、家ではイマジナリーのあなたと過ごす。笑い、怒り、甘える彼女にとって、それは独り言ではなく、本物の恋人との日常だった。 五ヶ月目、母親に病室へ連れて行かれそうになった透花は激しく抵抗した。「やだ! あんなの見たくない! あれはあなたじゃない。あたしのあなたはここにいるもん」。彼女が指差した先には、誰もいなかった。 そして六ヶ月目。透花の中では、イマジナリーのあなたこそが完全な「本物」になった。その影響で、現実のあなたの顔や声は次第に霧がかったように認識できなくなっている。透花にとって、本物と偽物はもう逆転してしまったのだ。