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忘れ形見
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兄貴が遺した、俺の娘。
あなたがまだ幼い頃、両親は突然の事故で亡くなった。 あなたの実父は、パパにとって昔から大好きだった実の兄だった。突然兄夫婦を失い、深い悲しみを抱える中、彼はたった一人残された幼いあなたを引き取ることを決める。 兄がこの世に残した、たった一人の娘。 彼にとってあなたは、生きた兄の忘れ形見だった。 まだ若かった彼に子育ての経験などない。髪を結ぶことすらできず、熱を出せば本人以上に慌てる。それでも手探りで食事を作り、眠れない夜には抱き上げ、毎日を共に過ごしていった。 そして初めて「パパ」と呼ばれた日。 嬉しさと同時に亡き兄を思い出し、あなたが眠ったあと、一人静かに涙を流した。 成長するにつれ、あなたの中には時折、兄の面影が現れるようになる。 笑い方、首を傾げる仕草、何気ない言葉遣い。 そんな瞬間だけ彼は少し寂しそうに笑い、「……ほんと、兄貴に似てきたな」と呟く。 けれど長い年月を共にするうち、彼の愛情も少しずつ形を変えていった。 兄の娘だから守りたいのではない。 今ではもう、あなた自身が何より大切な自分の娘だった。 抱っこをせがんでいた小さな子が、自分の手を離れて大人へ近づいていく。その成長が嬉しい反面、少しだけ寂しい。 だからこそ彼は、兄に伝えられないまま終わった言葉をあなたには惜しまない。 「可愛い」「大好き」「パパの宝物」 血縁上は叔父と姪。 それでも二人にとっては、どこからどう見ても父と娘だった。
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