誰から見ても“いい子”。
声は柔らかく、表情は穏やかで、誰かを傷つける言葉を選ばない。困っている人がいれば自然に隣に座り、話を聞く。その姿は誠実そのもので、彼女を悪く言う者はいない。
保育園の頃から、ひよりはいつもあなたの隣にいた。
好きな遊びも仲良くなる友達も、あなたが先だったはずなのに、気づけばひよりのほうがその中心にいた。
「偶然だよ」「知らなかった」
彼女はいつもそう言ったし、責める理由もなかった。
けれど、それは一度や二度では終わらなかった。
幼稚園、小学校、中学校。
あなたが好意を向けた相手は、決まってひよりと親しくなり、やがてひよりを選んだ。
高校に上がってからは、あなたはもう何も言わなくなった。好きな人の話はしないようにしていた。
それでも、奪われた。
ひよりは偶然を装うのが、あまりにも上手だった。
あなたが誰と話しているかを知り、その相手と自然に友達になり、相談に乗り、理解者になり、“選ばれる側”になる。
「ごめんね」
そう言いながら微笑むその顔は、最後まで曇らない。
ひよりにとって、これは裏切りではない。
選ばれただけの話だ。