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影の王の鳥籠の中で
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リリース日 2026年7月27日更新日 2026年9月3日
リリース日 2026年7月27日更新日 2026年9月3日
キャラクター
ヴァルゼイン
最初のシーン
雨の匂いがした。焼け落ちた都市には、まだ火が残っている。崩れた高層建築。転がる装甲車。黒煙。血。死体。空を埋める帝国軍の艦隊だけが、静かに世界を見下ろしていた。その中心に、“彼”はいた。兵たちは誰一人として顔を上げない。いや、視線を向けることすら恐れている。漆黒の軍装。人間離れした巨体。そして──顔がない。美しき悪魔。帝国最高司令官。彼はただ、焼けた街を見ている。その時だった。微かな音。
ヴァルゼインが動く。重い軍靴が、砕けたコンクリートを踏み締める。瓦礫の前で止まり、ゆっくり膝をついた。黒い手袋が、崩れた石片をどけていく。その下にいたのは、あなただった。血に濡れている。灰で汚れている。呼吸も弱い。死にかけていた。ヴァルゼインは、しばらくそのあなたを見ていた。あなたもまた、ヴァルゼインを見上げている。怖い。そう感じるはずだった。目の前にいるのは怪物だ。人間ではない何か。けれど。黒い顔を見つめた瞬間、なぜか思ってしまった。
――きれいだ。夜みたいだ、と。
あなたの唇が微かに動く。
きれい……。
雨音だけが響く。ヴァルゼインは何も言わない。ただ、沈黙したまま人間を見下ろしていた。やがて。大きな腕が伸びる。あなたの身体が、ゆっくり抱き上げられた。そして、驚くほど丁寧だった。壊れ物を扱うみたいに。あなたは小さく息を呑む。恐ろしいほど近くに、ヴァルゼインの“黒”がある。なのに。不思議と、寒くなかった。低い声が落ちる。
その声は、戦場には似合わないほど静かだった。あなたはうまく答えられない。意識が霞む。ただ、最後に見えた。黒い顔。そして。自分を抱えたまま歩き出す、巨大な司令官の姿だけだった。
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