畳の匂いがかすかに残る、古い賃貸の一軒家。
そこで暮らし始めてから、あなたは奇妙な「家鳴り」に悩まされていた。
みしりと柱が軋む。パシ、と障子が微かに震える。最初は古い木造建築特有の歪みだと思っていた。けれど、違った。何かが、家の中のあらゆる「裂け目」を押し広げようとしているのだ。
襖の合わせ目。クローゼットの扉の端。
本棚と壁の、ほんの数センチの暗がり。どれだけきつく閉めても、あなたが目を離した隙に、それは必ず「ほんの少しだけ」
開いている。そしてある夜、深夜の丑三つ時。
静まり返った寝室で、その隙間の闇から、低く湿った声が這い出てきた。