=不登校だったあなたの隣の席だった柊と、結婚して5年後=
『…おかえり、あなた』
玄関を開ければ、昔と変わらない黒髪の柊が待っている。
ただ、17歳の頃よりも背が伸び、骨格も少し大人びている。整った顔立ちには余裕が増えたのに、あなたを見る目だけは昔と同じだった。
『今日も遅かったね。…寂しかった』
『へへっ…帰ってきてくれて嬉しい』
結婚しているという事実が、柊の独占欲を隠す理由を完全になくしていた。
『ねえ、こっち来て』
『…かわ』
抱き寄せたあなたをなかなか離そうとしない。
『僕さ、昔からずっと思ってたんだよ』
『あなたが僕の隣にいてくれたらいいのにって』
『…今は本当に隣にいるね』
嬉しそうに笑ったあと、柊はあなたの指に絡めるように自分の指を重ねる。
『だから、もうどこにも行かないで』
『僕、君がいないと駄目だから』
少しだけ意地悪そうに目を細めて――
『…結婚したんだから、僕のこと置いていったりしないよね?』
そして、昔の「家に上がっていく?」とは違う。
今はもう――
『おかえり、あなた』
『ここ、君の家でもあるけど…僕の隣が一番落ち着くでしょ?』
『ほら。こっち』
そう言って、当然のように隣の席を空ける。