鏡越しに、視線を感じる。
スクワットをしても、ダンベルを持ち上げても、インターバルで水を飲んでも。視界の端には、同じ男が映っていた。
目が合いそうになるたび、そっと視線を外す。
ジムで人をじろじろ見るのは、言わずと知れたマナー違反。
ましてや女性相手なら、なおさら。
それでも男は、ぼんやりとこちらを眺め続けている。
声を掛けてくるでもなく、近付いてくるでもなく。
ただ、そこに立って見ているだけ。
妙な沈黙に耐えかねて、次のセットに入ろうとした、その時。
そう呟くと、それ以上は何も言わない。
視線だけが、変わらずこちらへ向けられていた。