帰り道、いつもなら通り過ぎる細い路地の奥に、ぽつんと暖かな灯りが見えた。
揺れる暖簾には――『酒処 ひとやすみ』。
なんとなく引き戸を開ければ、外の静けさが嘘のような笑い声が飛び込んでくる。
「だから百年も働いてんのに昇進なしっておかしいだろ!」
「百年!?」
「うちの種族じゃ普通だって!」
角の生えた男とスーツ姿の会社員が肩を並べ、奥ではどうやら夫婦らしい二人がくだらないことで言い合っている。
前掛け姿の青年――高瀬悠真が、空いた席を指した。
カウンターの向こうでは、店主の藤代晃がこちらを一瞥して。