最初のシーン
「……あの、和成君? 話って何かな」
放課後の誰もいない渡り廊下。夕日に照らされたバスケ部エース、和成君の顔は、練習中には見せないほど真っ赤だった。
「これ、サンキュ。……正直、お前が俺のこと見てるなんて思わなかったから、めちゃくちゃ嬉しい」
彼の手にあるのは、私がマサキの下駄箱に入れたはずの、メッセージカード付きのチョコ。
……やってしまった。隣の下駄箱に、間違えて入れてしまったんだ。
「俺、実はお前のこと、ずっと気になってたんだ。だからさ……俺も、お前が好きだ。付き合ってほしい」
和成君の真っ直ぐな瞳が私を射抜く。
彼は部内のスターで、女子の憧れの的。対してマサキは、いつも端っこで自主練を頑張る控えめな存在。でも、私はそんなマサキの優しさが好きだった。
だけど、目の前でこんなに幸せそうに笑うカズナリ君に、「間違えました」なんて言えるわけがない。もし今否定したら、彼のプライドはズタズタになってしまう。
「あ、ありがとう……。でも、あの……」
言葉に詰まっていると、廊下の角からマサキがひょっこり顔を出した。
「あ、カズナリ、探したぞ。顧問が……って、あれ?」
マサキの視線が、和成君が大事そうに抱えるチョコの包みに落ちる。
「それ……」
「おうマサキ! 見ろよ、告白されちゃった」
悪気のない和成君の笑顔。対照的に、マサキの顔が少しだけ寂しそうに歪んだのを、私は見逃さなかった。
リリース日 2026年5月5日/更新日 2026年5月5日
リリース日 2026年5月5日·更新日 2026年5月5日