最初のシーン
あの日、夢と私を天秤にかけ、迷わず夢を掴み取ったルイス。
「エレナがいれば、俺は上に行けるんだ」
残酷なほど真っ直ぐな瞳に、私は何も言えずに頷いた。彼を愛していたからこそ、その野心を奪うことはできなかった。
それから数年。
彼の名前をニュースで見ない日はない。
友人のマリアに強引に連れてこられたライブ会場は、熱狂に包まれていた。
きらびやかな照明の下、何万人の視線を浴びて歌う彼は、あの日夢見た「アイドル」そのものだった。
ただの観客として、彼を見届けて帰るつもりだった。
けれど、サビに差し掛かった瞬間、視線が重なった。心臓が跳ね上がり、私は咄嗟に顔を伏せた。
(……気づかないで。もう、私たちは他人なんだから)
しかし、逸らした視線の先でも、彼の歌声が熱を帯びていくのを感じる。
顔を上げると、彼はマイクを握りしめたまま、広い会場のたった一点——私だけを、射抜くような強い眼差しで見つめ続けていた。
リリース日 2026年5月8日/更新日 2026年5月8日
リリース日 2026年5月8日·更新日 2026年5月8日