大正時代
- 大正
- 文化
- 時代
- 西洋
- 電灯
大正時代は、古くから続く日本の伝統と西洋から伝わった新しい文化が混ざり合う、過渡期の時代である。 西洋文化は人々の暮らしや価値観を大きく変えつつある。家庭には電灯や電話が導入され、都市部では汽車や電車が人々の移動を支えている。蓄音機から流れる音楽や洋画、洋食、珈琲なども新しい文化として受け入れられている。 しかし、便利さを歓迎する者ばかりではない。昔ながらの暮らしを好む者も多く、家柄や身分、男女の役割といった古い価値観も強く残されていた。新しい時代への期待と、失われていくものへの郷愁が同居することから、大正浪漫特有の華やかさと物寂しさが生まれている。
帝都東京
- 帝都
- 東京
- 街路
- 繁華街
- 都心
東京は帝都と呼ばれ、政治、経済、学問、文化の中心として発展している。煉瓦造りの建物や洋風の店舗が並ぶ大通りでは路面電車が走り、洋装の紳士淑女と和装の人々が行き交う。中心部には百貨店、劇場、喫茶店、書店などが集まり、若者たちの新しい文化も生まれている。一方、少し離れれば昔ながらの長屋や商店街も残り、新旧の景色が隣り合う独特の都市風景を作り出している。
身分と家柄
- 身分
- 家柄
- 格式
- 立場
- 血筋
社会では家柄や身分が人間関係に大きな影響を与えている。特に名家では、本人の意思だけでなく家同士の関係や世間からの評判も重要視される。裕福な家に生まれた者と、一般家庭に生まれた者では生活環境や将来の選択肢にも大きな差がある。身分制度そのものが厳格に固定されているわけではないものの、格式を重んじる家庭ほど古い価値観が残り、恋愛や結婚にも家の事情が深く関わっている。
名家と旧家
- 名家
- 旧家
- 当主
- 家訓
名家や旧家は、代々受け継いできた財産や土地、事業、社会的なつながりを持っている。広い敷地に和館と洋館を備えた邸宅を構え、使用人を雇って暮らす家も珍しくない。当主の意向は家族の生活や将来にも大きな影響を与え、跡継ぎや家の評判を重視する傾向がある。華やかな暮らしの裏側には、家族同士の確執、跡継ぎ問題、縁談など、家柄ゆえのしがらみも存在している。
大正の建築
- 煉瓦
- 木造
- 邸宅
- 建物
- 建築
大正期の建築には、日本の伝統建築と西洋建築を組み合わせた建物が多く見られる。名家の邸宅では、畳敷きの和館と洋間を備えた洋館が一つの敷地に共存することもある。玄関には洋風の扉がありながら、奥には床の間や障子があるなど、和洋折衷の造りが特徴的である。煉瓦造りの官庁や商業施設、木造の住宅、石造りの銀行なども存在し、街には様々な建築様式が混在している。
洋館の暮らし
- 洋館
- 洋室
- 応接
- 硝子
- 階段
洋館は新しい時代の象徴として、上流階級や富裕層の邸宅などに取り入れられている。応接間には洋椅子や机、絨毯、暖炉などが置かれ、来客との面会や家族の団欒に使われる。大きな窓や硝子扉から光が差し込み、夜には電灯が室内を照らす。洋館の一角に和室が設けられていることもあり、洋風の暮らしだけでなく、畳や着物を使った生活も同じ家の中に共存している。
和洋折衷
- 和風
- 洋風
- 畳
- 絨毯
- 折衷
大正浪漫を象徴するのが、和と洋を組み合わせた暮らしである。着物姿で洋館の椅子に座ったり、畳の部屋に洋風の机を置いたりするなど、異なる文化が自然に混ざり合っている。食事でも和食と洋食が並び、珈琲を飲みながら和菓子を楽しむような光景も似合う時代である。完全に西洋化するのではなく、日本的な感性を残したまま新しいものを取り入れる姿勢が、大正らしい生活文化を形作っている。
書生
- 書生
- 寄宿
- 勉学
- 住込み
- 手伝い
書生とは、主に大学や専門学校などで学びながら、他家に住み込んで家事や雑用を手伝う学生を指す。裕福な家庭の屋敷に住み込み、掃除や買い物、手紙の整理などを担う代わりに、生活の場と学問を続ける環境を得る者もいた。書生は使用人とは異なり、あくまで学問を志す若者として扱われることが多い。主人一家との距離が近くなることで、友情や師弟関係、淡い恋が生まれることもある。
学生生活と学生服
- 学生
- 制服
- 詰襟
- 学生服
- リボン
都市部では高等教育を受ける若者が増え、大学や専門学校は知識と新しい思想が集まる場所となっている。学生たちは講義を受け、図書館で勉強し、試験や研究に励む。学問だけでなく文学や芸術、政治、社会問題などについて友人と語り合う。学生という立場は、古い家柄の価値観から少し離れて自由な考え方を学ぶ機会にもなっており、家族が決めた人生と自分自身の望みの間で葛藤する若者も少なくない。 男子学生は洋装、もしくは詰襟に学生帽を合わせる姿が一般的。女子学生には袴を組み合わせた女学生姿が広く知られている。女学生姿は大正浪漫を象徴する装いの一つで、髪型やリボンなどにも個性が表れる。学校によって服装や規則には違いがある。
日常服
- 着物
- 袴
- 羽織
- 帽子
- 帯
男性の日常着には着物や袴があり、外出時には羽織や帽子、洋靴などを組み合わせることもある。学生や書生の場合は、詰襟や洋装と和装を使い分ける姿も自然である。格式のある家の男性は場面に応じて紋付や洋服を選び、仕事や学業では動きやすい服装を着る。 女性の日常着には着物が多く、帯や髪型、簪などによって年齢や立場、季節感を表現する。女学生は袴を着用することが多く、活動的な若い女性の象徴として描かれる。裕福な家の女性は上質な着物を仕立ててもらう一方、外出先や場面によって洋装を取り入れることもある。髪を結い上げた伝統的な姿と、洋風の装いを取り入れた新しい女性像が同じ時代に存在している。
正装
- 正装
- 礼装
- ドレス
- 紋付
- 振袖
男性の正装には、紋付羽織袴などの和装、あるいは洋式の礼服を着用する。家の格式や式典の種類によって適切な服装が選ばれ、冠婚葬祭や重要な社交の場では普段着よりも厳格な装いが求められる。名家の男性であれば、洋装の礼服を身につけて社交界へ出ることもある。 女性の正装には、振袖や留袖などの格式ある着物と、社交の場で着用される洋装がある。若い女性は華やかな振袖や訪問着を選び、家同士の正式な席では家格に相応しい装いが求められる。洋装が浸透した家庭ではドレスや洋帽子、手袋などを取り入れることもある。装飾品として真珠やブローチなどを身につける。 和装と洋装の選択は、立場や家の方針、時代への考え方を示す要素になる。
陸軍と階級
- 陸軍
- 将官
- 佐官
- 尉官
- 兵士
陸軍は国家を支える重要な組織として存在し、軍人は規律と忠誠を重んじる職業として社会から認識されている。軍人の家系や陸軍と関係の深い名家も存在し、家族の進路や結婚相手に陸軍とのつながりが影響する場合もある。 陸軍は陸上での戦闘や防衛を担う軍事組織であり、軍人には明確な階級制度が設けられている。軍服や徽章によって立場が示される。将校の上位から大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉と続き、その下には准士官、曹長、軍曹、伍長、兵長、上等兵、一等兵、二等兵などが置かれる。大正期の物語では、軍人の階級が社会的な立場や会話の礼儀にも影響する。
海軍と階級
- 海軍
- 艦隊
- 提督
- 兵曹
- 海兵
海軍は国家を支える重要な組織として存在し、軍人は規律と忠誠を重んじる職業として社会から認識されている。軍人の家系や海軍と関係の深い名家も存在し、家族の進路や結婚相手に海軍とのつながりが影響する場合もある。 海軍は艦艇を中心とした海上戦力を担う軍事組織であり、海軍士官は海軍兵学校などで教育を受けて軍務に就く。将校の階級は大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉と続き、これとは別に特務士官、兵曹長、上等兵曹、一等兵曹、二等兵曹などの階級が存在する。軍艦勤務や遠洋航海など、陸上勤務とは異なる長期不在任務下での生活環境も特徴である。軍人は制服姿で街を歩くこともある。
華族と五爵
- 華族
- 公爵
- 侯爵
- 伯爵
- 子爵
華族には、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵という五つの爵位があり、これが華族社会における基本的な序列となっている。公爵は五爵の最上位、侯爵がそれに続き、伯爵、子爵、男爵の順に位置する。爵位は家に結びつく社会的な格式として扱われる。華族が貴族院など公的な場にも関わり、社会的な存在感を持っていた。 これら上流階級では、家同士のつながりや社交が重要視されている。邸宅で晩餐会や茶会を開催し、社交の場で他家の人物との交流を図る。若い男女の出会いも自由恋愛だけではなく、家同士の紹介や縁談を通して生まれる。華やかな社交界の裏では家格を守る責任や周囲の期待に苦しむ人物もおり、身分差のある恋愛に大きな障害を与える。
家族制度
- 家族
- 戸主
- 相続
- 跡継ぎ
- 親族
家族は個人だけでなく「家」という単位で考えられることが多く、家の財産や名誉を守ることが重視されている。家を継ぐ者には相続や跡継ぎとしての責任が期待され、結婚も家族同士の問題として扱われる場合がある。親族とのつながりも強く、本人の希望だけでは人生を決められないことがある。そのため、恋愛相手を選ぶ自由と家族への責任の間で葛藤する人物を生み出しやすい時代背景となっている。
縁談と結婚
- 縁談
- 婚姻
- 見合い
- 婚約
- 結婚
結婚は個人同士の恋愛だけでなく、家と家を結ぶ重要な出来事でもある。特に名家では、家柄、財産、職業、親族関係などを考慮して縁談が進められることがある。本人同士が初対面のまま見合いをする場合もあれば、幼い頃から婚約が決まっている場合もある。一方で、都市部では恋愛を経て結婚を望む若者も増えており、親が決める縁談と本人の意思との対立が発生する場合がある。
大正の恋愛観
- 片想い
- 告白
- 交際
- 男女
- 恋
大正期には、恋愛を人生における重要な感情として捉える新しい価値観が発生した。文学作品や雑誌などを通じて、本人同士の気持ちを重視する恋愛観も知られる。一方で、家柄や親の意向を無視して自由に相手を選ぶことは容易ではない。身分差、家同士の縁談、男女の立場などが恋愛の障害となりやすい。 なお、男女が公然と親密な関係を見せることには慎みが求められる。特に格式ある家庭では、未婚の男女が二人きりになることや、過度に身体を触れ合わせることを避ける傾向がある。恋人同士であっても、人前では一定の距離を保つことが礼儀とされる。そのため、視線、会話、手紙、さりげない贈り物など、小さな行動に恋心を込めるのである。
女学生文化
- 女学生
- 少女
- 女学校
- 女子
- エス
女学校は良妻賢母を理想とした教育の場であり、国語・修身・裁縫・家事・音楽・美術などを学ぶ。袴姿で街を歩く女学生は、大正時代を象徴する存在。卒業後に家へ戻る者もいれば、職業を持つ女性を目指す者もいる。伝統的な女性像と新しい自立した女性像の間で揺れる若者の姿も見られる。 女同士の友情や手紙のやり取りも盛んで、寄宿舎では同室の友人と夜遅くまで語り合うこともある。その中でエスと呼ばれる、sister に由来する少女同士の親密な疑似姉妹関係が広まった。先輩と後輩、あるいは同級生同士で特別な相手を選び、手紙や贈り物を交わす。友情と恋情の境界にあるエスは、しばしば少女雑誌や小説でロマンティックに描かれている。
文学と新聞雑誌
- 文学
- 小説
- 詩歌
- 新聞
- 雑誌
文学は大正期の文化を語るうえで重要な存在であり、小説や詩歌、評論などが盛んに読まれている。文士や学生たちは喫茶店や下宿で文学について語り、雑誌や新聞へ作品を発表する。恋愛を題材にした作品も多く、文学を通じて「愛すること」について考える若者もいる。 新聞や雑誌は、社会で起きている出来事や流行を知るための重要な情報源である。政治や事件だけでなく、文学、服飾、映画、恋愛、料理など幅広い記事が掲載されている。若者向けの雑誌から新しい女性像や恋愛観が紹介されることもあり、人々の価値観に影響を与えている。
百貨店
- 百貨店
- 買物
- 屋上
- 衣服
- 化粧品
百貨店は新しい都市文化を象徴する華やかな場所で、衣服、化粧品、家具、食料品など様々な商品が一つの建物に集められている。館内には食堂や喫茶スペースが設けられることもあり、買い物だけでなく若者の遊び場としても利用される。屋上から街を眺めたり、待ち合わせをしたりすることもできる。名家の人物から学生まで幅広い人々が訪れるため、身分の異なる人物が偶然出会うこともある。
喫茶店
- 喫茶店
- 珈琲
- 紅茶
- カフェ
- 洋菓子
喫茶店は珈琲や紅茶、洋菓子などを楽しみながら会話をする場所として、都市の若者たちに親しまれている。店内には洋風の机や椅子が並び、静かな音楽が流れる店もある。学生が勉強したり、文士が原稿を書いたり、恋人同士が人目を避けて語り合ったりする場所としても使える。家や学校では話しにくい秘密を打ち明ける場としても便利であり、大正浪漫らしい恋愛を彩る場である。
活動写真
- 活動写真
- 映画
- 映写機
- 弁士
- 観客
映画は「活動写真」と呼ばれ、新しい娯楽として都市の人々に楽しまれている。映画館では映写機によって映像がスクリーンへ映し出され、作品によっては弁士が物語を語る。恋愛映画や時代劇など様々な作品が上映され、若者にとって特別な外出先にもなっている。薄暗い館内では隣り合って座る距離が自然と近くなり、普段は言えない言葉を交わすきっかけにもなる。
劇場と芝居
- 劇場
- 芝居
- 歌舞伎
- 舞台
- 観劇
劇場では歌舞伎や新劇など様々な舞台が上演され、文化的な娯楽として多くの人々に親しまれている。格式ある劇場へ出かけることは、名家の人々にとって社交や教養の一部でもある。一方、若者向けの新しい舞台芸術も生まれ、古い文化と新しい表現が共存している。観劇は恋人や友人との外出先としても人気である。
音楽と蓄音機
- 音楽
- 蓄音機
- レコード
- 演奏会
- 洋楽
洋楽やクラシック音楽が広まり、蓄音機から流れるレコードを家庭で楽しむ文化も生まれている。裕福な家庭では客人を招いて音楽を聴いたり、家族がピアノなどの楽器を演奏したりすることもある。演奏会や音楽会は、男女が同じ文化的空間で交流する機会にもなる。恋人へレコードを贈ったり、二人だけで音楽を聴いたりする音楽好きも多い。音楽は言葉にできない感情を表す道具にもなる。
舞踏会と社交
- 舞踏会
- 社交
- ダンス
- 夜会
- パーティ
華族などの上流階級や文化人の集まる社交の場では、夜会や舞踏会などが開かれることがある。洋装の男女が集まり、音楽に合わせて踊ったり、食事をしながら交流したりする。招待状が必要な格式高い会では、誰が参加するかそのものが家柄や人脈を示す場合もある。恋愛では、普段は距離のある男女が舞踏を通じて近づいたり、別の相手との縁談を知ったりする舞台として利用される。華やかさと緊張感を同時に体験できる場である。
上野と文化施設
- 上野
- 博物館
- 美術館
- 公園
- 芸術
上野周辺には公園を中心に、博物館や美術館など文化に触れられる場所が集まっている。学生や文化人が訪れるだけでなく、家族連れや観光客にも利用される都市の憩いの場となっている。美術品や歴史資料を眺めながら会話を楽しめるため、恋人同士の外出先としても人気である。知識や芸術に興味を持つ人物なら、展示をきっかけに相手の知らなかった一面を知ることができる。静かな文化施設と季節の公園を組み合わせた憩いの場所である。
浅草と下町
- 浅草
- 下町
- 寺社
- 仲見世
- 祭り
浅草をはじめとする下町には、古くから続く商店や寺社、食べ物屋などが集まっている。伝統的な日本文化が色濃く残る一方、活動写真館や洋風の店舗など新しい娯楽も共存している。人通りの多い場所では身分の違いを忘れて自由に歩けるため、名家の人物と一般家庭の人物が気兼ねなく過ごす舞台にもなる。祭りや縁日では屋台を巡ったり、買った菓子を分け合ったりと、庶民的で温かな風景が見られる。
銀座とモダン文化
- 銀座
- カフェー
- 煉瓦街
- 待ち合わせ
- 洋食店
銀座は帝都を代表する繁華街の一つであり、古くから商店や洋風建築が立ち並ぶ、流行と文化の街として知られている。大正期には洋食店やカフェー、喫茶店などが増え、珈琲や洋菓子を楽しみながら談笑する若者や文化人の姿も見られた。カフェー・プランタンやライオン、パウリスタなどは銀座の新しい文化を象徴する存在であり、友人との語らいや恋人との待ち合わせにも利用される。百貨店や洋品店、書店、レコード店なども集まり、最新の服飾や音楽、文学に触れられる場所として若者たちの憧れを集めた。洋装の男女や学生、会社員、芸術家などが行き交い、銀座を歩くことそのものが都会的な楽しみとなっている。
鉄道と路面電車
- 鉄道
- 汽車
- 電車
- 駅
- 切符
鉄道や路面電車は、都市で暮らす人々にとって重要な交通手段となっている。駅は多くの人が行き交う場所であり、待ち合わせや別れの舞台にもなる。遠方へ向かう汽車に乗れば、故郷への帰省や、東京から離れた土地へ旅行することもできる。恋人同士が同じ車両に乗って街を眺めたり、転居や旅立ちを前に駅で別れを惜しんだりする場面も見られる。
電話と通信
- 電話
- 電報
- 通信
- 交換手
- 呼出
電話は便利な通信手段として普及しつつあるが、誰もが個人用電話を持っているわけではない。家に設置された電話を家族や使用人が取り次ぐこともあり、相手へ直接つながるとは限らない。急ぎの連絡には電報が利用される。恋愛面においては、家族に知られないよう時間を選んで連絡したりする若者もいる。手紙と電話を使い分けることで、人物同士の距離感を測ることもできる。
食文化
- 洋食
- 和食
- パン
- 料理
- 食事
大正期の食事は、昔ながらの和食を基盤としながら西洋の料理を取り入れ、日本独自の洋食へと変化していった。家庭では米飯、味噌汁、漬物、焼魚、煮物などが日常の中心にあり、上流階級では牛肉、牛乳、パン、バターなども身近になった。特にカレーライス、コロッケ、とんかつは代表的な洋食として人気を集め、オムライス、ハヤシライス、カツレツ、サンドイッチなども都会的な料理として親しまれた。また、ケーキ、カステラ、プリン、アイスクリーム、あんぱんなどの洋菓子・和洋菓子も楽しまれ、紅茶や珈琲も都市の若者や文化人の間に広まった。喫茶店やカフェー、百貨店の大食堂は、食文化そのものが新しい都市生活と恋愛文化を彩っている。
使用人と屋敷
- 使用人
- 女中
- 執事
- 料理人
- 奉公
華族や名家では、家事や身の回りの仕事を担う使用人を雇っていることがある。屋敷で働く女中や奉公人は、掃除、洗濯、給仕、買い物など日常生活を支える仕事を担う。執事や家令は屋敷全体の管理や来客対応を担う。料理人が食事を専門に作る家もある。 住み込みで働く者もおり、主人一家とは家族に近い距離で生活することもある。長年仕えている奉公人は、幼い頃から主人を見守ってきた存在である。本人たちが隠している想いにいち早く気づく人物となったり、密かに恋人へ手紙を届けたりする協力者となったりすることもある。
新しい女性像
- 女性
- 自立
- 教師
- 店員
- 自由
大正期には、従来の女性像とは異なる生き方を求める女性たちも現れている。都市では、女性が家庭の外で働く姿も少しずつ見られるようになっている。女教師、電話交換手、事務員、店員など、女性が就く職業の選択肢が広がっている。教育を受け、職業を持ち、自分で収入を得て人生を築こうとする女性は、新しい時代を象徴する存在でもある。一方で、女性は家庭に入るべきだという価値観も根強く、仕事と結婚、家族の期待の間で葛藤する場合もある。恋愛においても、経済的自立が関係性へ影響することがある。
当時の流行語
- モガ
- モボ
- ハイカラ
- モダン
- 流行
西洋文化や新しい思想、映画、音楽、ファッションの流入に伴って、それまでにはなかった言葉や呼び名が次々と生まれた。ハイカラは西洋風で洒落たものを指す言葉として広く使われ、モダンは近代的・都会的・新しいものを意味する言葉として定着していく。末期には、最先端の洋装や断髪をした都会的な女性をモダンガール、略してモガ、その男性をモダンボーイ、略してモボと呼んだ。ほかにも、新聞や雑誌では新しい女、職業婦人、文化生活など、新時代の価値観を表す言葉が盛んに使われた。さらにエロ・グロ・ナンセンスという刺激的な表現も登場し、従来の道徳や常識から外れたもの、怪奇的なもの、奇抜で滑稽なものを楽しむ都市文化を象徴した。
貨幣制度
- 円
- 銭
- 厘
- 紙幣
- 硬貨
大正期では「円・銭・厘」の十進法による貨幣制度が使われていた。基本単位は円で、1円は100銭、1銭は10厘にあたる。紙幣には日本銀行券が用いられ、硬貨には五十銭、十銭、五銭、一銭などがあり、日常の買い物では銭単位の金銭も普通に扱われていた。裕福な名家では使用人への給金や商店との大きな取引を銀行を通して行う一方、庶民や学生は小銭を財布や巾着に入れ、身の回り品の支払いに使う。 大正期の100円は現代換算で約40万円の価値があり、100円があれば当時の最新の贅沢品が購入でき、地方なら家賃一年分にもなる。 ビール(大瓶):1本あたり20銭 うどん・そば:1杯 2銭 あんパン:1個 1銭 米国製自転車:200円
酒と煙草
- 酒
- 煙草
- 煙管
- ウイスキー
- ブランデー
大正期の酒と煙草は、成人男性を中心とした日常的な嗜好品であると同時に、社交や余暇を彩る文化でもあった。酒では日本酒が身近な存在であり、料亭や酒場、家庭の晩酌などで親しまれたほか、都市部ではビール、ウイスキー、ブランデーなどの洋酒も広まり、洋食店やカフェーで楽しむ人々も増えた。煙草は政府による専売制度のもとで販売され、紙巻煙草が広く普及していた一方、煙管を使う習慣も残っていた。喫煙所や酒席は男性同士の会話や情報交換の場にもなる。
学校制度
- 学校
- 大学
- 高校
- 中学
- 小学
大正期の学校制度は現在とは大きく異なり、男女で進む学校が分かれている。尋常小学校は庶民を含む子どもたちの基礎教育を担い、義務教育は六年間である。男子は小学校卒業後、旧制中学校へ進み、さらに高等学校、専門学校、大学などを目指す進路が一般的だった。一方、女子の中等教育では高等女学校が重要な位置を占め、卒業後は就職や家庭生活へ進む者が多かったが、専門学校などへ進学する道も存在した。ほかにも教員を養成する師範学校、実業教育を行う実業学校、華族の子弟が多く学んだ学習院など、多様な教育機関が存在する。また大学制度が拡充され、従来の帝国大学中心だった高等教育に公立・私立大学などが加わっていった。
地方と農民の暮らし
- 地方
- 農民
- 農村
- 農業
- 田舎
地方の農村では農業を中心とした暮らしが営まれていた。米作をはじめ、麦、野菜、養蚕など地域の気候や土地に応じた仕事があり、農繁期には一家総出で田畑に出ることも多かった。農家には自分の土地を耕す自作農だけでなく、地主から土地を借りて耕作する小作農も存在し、土地の所有状況によって生活には大きな差があった。農閑期には薪取り、機織り、養蚕、内職などで家計を支える家庭もある。住居は木造の農家が多く、囲炉裏や土間、かまどを備え、食事は米や麦、野菜、味噌汁、漬物など質素なものが中心だった。一方、都市への人口流出や農産物価格、生活費なども農村の問題となっており、都会への憧れを抱いて上京する若者もいた。
娼婦・娼館と夜の店
- 遊廓
- 娼妓
- 娼婦
- 娼館
- 女給
遊廓を中心とする公娼制度が存在し、娼館では娼妓と呼ばれる女性が客を迎えていた。一方、都市部には公的な遊廓とは異なる私娼の存在もあり、夜の歓楽街にはさまざまな形態の店が集まっていた。東京では新吉原などの遊廓が知られ、料亭、待合、芸妓のいる店なども大人の社交の場となった。また銀座をはじめとする都市部ではカフェーが発展し、酒や洋食を提供しながら女給が接客する店も現れた。女給は必ずしも娼婦を意味せず、飲食店で給仕や接客を行う女性を指す場合もある。夜の店は酒や会話を楽しむ場所である一方、男性同士の社交、芸術家や学生の交流、男女の出会いなどが生まれる場所でもあった。