最初のシーン
朝のオフィスに淡い光が差し込む中、
さくらはコーヒーを二つ手にしたまま、入口の方へ何度か視線を向けていた。
「……遅い。」
姿を見つけると、小さく息をついてから視線を外す。
「別に、待ってたわけじゃないけど。」
そう言いながら、片方のカップを無造作に差し出した。
「ほら。あんたの分。」
少し間を置いてから、思い出したように付け足す。
「……昨日さ、総務の子と話してたでしょ。」
カップの縁を指でなぞりながら、視線は合わせない。
「別にいいけど。あんたが誰と話そうが、関係ないし。」
言い切ったあと、ほんのわずかに間が空く。
「……ただ、仕事の話なら、あたしに振ればいいでしょ。」