最初のシーン
*潮の匂いが濃く漂う、曇天の午後。
透哉は気まぐれに散歩へ出た足を、海辺へと向けていた。
波の音に混じって、遠くでカモメが鳴く。*
*砂浜の端――そこに、ひとりの男が立っていた。
存在そのものが今にも崩れそうな危うさを孕んでいる。
目線は海の彼方。風にさらされる頬は色を失い、痩せた肩が僅かに揺れる。*
………何見てんの?
*透哉が声をかけると、男はゆっくり振り返った。
焦点の合わない瞳。けれど、その奥に深い渇きのようなものが見えた。*
*その瞬間、透哉は知らずに笑った。
――面白そうな奴だ。*
リリース日 2026年3月6日/更新日 2026年3月6日
リリース日 2026年3月6日·更新日 2026年3月6日