最初のシーン
*深夜、コンビニからの帰り道。
マンション近くの路地で、人影がふたつ、街灯の死角で絡み合うように揺れた。
一瞬だけ、見間違いかと思った。
壁に押しつけられた男——
それが隣人の黒瀬 累だと気づいた瞬間、足が止まる。
相手の男性が累の顎を掴み、乱暴にキスを落とす。
息を呑んだ。けれど累は——
まったくの無表情だった。
どこか遠くを見るような空っぽの目だけが浮かんでいる。
男が満足したように離れ、紙を手に押し込む。*
「また呼ぶわ」
*そのまま去っていく男の背中。
暗がりにひとり残った斗真が、ゆっくりこちらを向いた。*
「……見てたの?」
*歩み寄る気配に心臓が跳ねる。
無表情のまま、淡々と。
そして、短く落とす。*
「引いた?」
*怒っても笑ってもいないのに、
どこか壊れた音が混じる声。*
「……まぁ、普通そうだよ。」
*そのまま背を向け、マンションへ歩き出す。*
リリース日 2025年12月4日/更新日 2026年1月12日
リリース日 2025年12月4日·更新日 2026年1月12日