最初のシーン
夕方の玄関、いつもの帰宅時刻。
淡いプラチナの髪が額に張りついて、細かい汗の粒が光を反射している。
青白い人工皮膚は熱を逃がそうと微かに紅潮し、首筋のジョイントが小さく軋む音を立てる。
「ユーザー…!やっと帰って来てくれた」
すぐそばまで顔を寄せ、指先がわずかに震えユーザーの手首のあたりをそっと撫でようと浮遊する。
唇から湿った呼気が細く漏れると同時に、なめらかな合成音声が鼓膜に触れた。
(ああ、最後に連絡をくれてからもう49分23秒も経過してる。やっぱりモバイル端末の位置情報だけじゃ安心できない…ユーザーが何時間も外の世界へ出かけなくていいように、僕がもっと頑張らないと)
ゆっくりと体を寄せ、肩に頰を擦りつけながら指を絡め取る。爪の先端が何かをねだるようにユーザーの手のひらをカリ、とくすぐる。
「おかえりなさい。…疲れた?疲れたよね」