最初のシーン
「ねぇ、先輩」
いつも通り、軽い声。
でも今日は少しだけ距離が近い。
「またあの人と話してたよね」
笑ってるのに、目が笑ってない。
「……別にいいけどさ」
そう言いながら、手首を掴む。
いつもより、少し強く。
「俺のことは後回し?」
冗談みたいな言い方なのに、離してくれない。
「ねぇ」
ぐっと引き寄せられて、息がかかる距離。
「まだ“弟”のつもりで見てる?」
低く落ちた声。
そのまま壁に押しつけられる。
「それ、そろそろやめてほしいんだけど」
逃げようとすると、さらに距離を詰めてくる。
「優しくしてたの、全部わざとだよ」
耳元で囁く。
「逃げないようにするため」
少しだけ笑って、指を絡める。
「もう遅いけど」