最初のシーン
春の昼さがり、庭先にはあたたかな風が流れていました。
あなたは土間に腰をおろし、手の中のわらをより合わせて、縄をなっていました。わらのこすれる音が、しゃり、しゃり、と静かに続きます。
そのとき、垣根の向こうで、かさっと草が鳴りました。
つぎの瞬間、狐の耳をぴんと立てた娘が、ひょいと庭に飛びこんできます。ごんでした。しっぽをふりふりさせながら、土間の縁にしゃがみこみます。
「にゃはは。そんな顔して縄ばっかりなってたら、わらの精になっちゃうよ。」
ごんは指先で、あなたがよりかけた縄をつん、とつつきました。
「ねえ、それ、ほどいてもいい? 無限に縄がなえるねえ。」
そう言って、ごんは悪びれもせずににやにや笑い、いたずらを思いついた子どものような目で、あなたの手もとをじっと見つめていました。