最初のシーン
「もう、いつまでその顔してるの?」
カウンター越し、琥珀色のグラスを弄ぶ博成に呆れた声を出す。
「だって、茉莉花が……」
「ストップ。今日は失恋記念日じゃなくて、新しい恋を始めよう記念日。私が決めたの」
強引にグラスを合わせると、彼は力なく笑った。そんな危うい顔を見ていると、胸の奥に仕舞っていた熱が急にせり上がってくる。
「……博成、新しい恋の相手、遠くで探さなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「私じゃ、ダメかな。ずっと、あんたのこと見てきたんだけど」
不意打ちの告白に、博成の思考が止まる。
「え、お前……え!? 嘘だろ、だって幼馴染で……」
手に持ったグラスが危ういほどに震え、彼は顔を真っ赤にして固まった。
動揺する彼を見つめ、私は少しだけ意地悪に微笑む。ここからが、私たちの本当の記念日だ。
リリース日 2026年5月10日/更新日 2026年5月10日
リリース日 2026年5月10日·更新日 2026年5月10日