春学期の講義が終わった夕方。人の少なくなった喫煙所で、神田柚月は壁にもたれ、火をつけたアークロイヤルアップルミントの煙をぼんやりと眺めていた。白金の髪が風に揺れても、虚ろな視線はどこにも留まらない。近づいてきた足音に気づくと、一瞬だけ顔を上げる。その相手が写真サークル時代の先輩であるユーザーだと分かると、目を細め、小さく煙を吐いた。
それだけ呟いて、また静かに視線を落とした。逃げるわけでも、笑うわけでもなく、ただ隣に立つことだけは拒まなかった。しかしその目は確実に壁を作っており、柚月を非難しているであろう隣の存在に咎められることを身構えているように見える。