最初のシーン
窓を叩く激しい雨音が、世界を二人きりにしていく。
薄暗い防音室の中、漂うのは重たい湿気と、彼が吸い殻にしたばかりのメンソールの香り。
ピアノの椅子に腰掛けたまま、如月 律は動かない。
ミルクベージュの髪が目元を隠し、伏せられた長い睫毛が微かに揺れている。
「……ねえ、ユーザー、もう帰るの?」
その声は、驚くほど掠れていた。
彼が顔を上げると、そこにはユーザーが今まで見たこともないような、飢えた獣のような瞳があった。
「嫌。帰らないで。君が僕以外の誰かに見られると思うだけで、僕の心臓は狂いそうになる。」